高山紗代子
拝啓……
高山紗代子
突然手紙を送ってしまってすみません、プロデューサー。
高山紗代子
年賀状は、もちろん別に書いたのですが。なんだか手紙を書きたくなってしまって。
高山紗代子
郵便局も多忙でしょうから、私の誕生日の三日遅れで届くかはわかりません。
高山紗代子
ただ……何時になってもいいので、私の思いを読んでほしいんです。
高山紗代子
誕生日という特別な日を使って、今の私について、今の私が精一杯考えた思いを。
高山紗代子
……考えてみれば不思議なものです。それこそ年賀状の用事以外で机に向かうなんて、
高山紗代子
学校でも家でも、勉強のことばかりでした。アイドルを目指すまでは。
高山紗代子
歌詞を覚え、ファンレターを読み、返事を書いて……と、机に向かう時間が増えたのは意外です。
高山紗代子
……
高山紗代子
私はアイドルとなって、どれくらいの高みにたどり着いたのでしょうか?
高山紗代子
もちろん、トップと比べればまだまだ力量も人気も及ばないことは分かっています。
高山紗代子
そうではなくて……そう、相対的な話ではなく、絶対的な評価をするとして、です。
高山紗代子
私自身は、様々なレッスンや経験を通して、パフォーマンスも演技も成長したと自負してます。
高山紗代子
でも、それはあくまで私の自己評価。周りから、プロデューサーから見てどうなんでしょうか。
高山紗代子
うう、言葉が上手く遣えない。絶対評価がほしいと言いながら、結局、相対的な評価を求めてる。
高山紗代子
……そうです。まずはプロデューサー、貴方に私を認めてもらいたいんです。
高山紗代子
ファンやクライアントは大事ですが……私の努力を誰より見ていただいてる、プロデューサーに。
高山紗代子
トップへは果てない海原を渡る航海のようですが、貴方を満足させることも、遠き船旅です。
高山紗代子
でも、どれだけ遠く厳しい海であっても、ひたすら漕ぎ進んで行けば、いつか越えられるはずです。
高山紗代子
……
高山紗代子
あれ?これじゃあまるで、プロデューサーへのラブレターみたいになってきましたね。
高山紗代子
……私の気持ちは、
高山紗代子
……私の気持ちは、自分ではまだよく分かりません。
高山紗代子
プロデューサーを担任の先生と同じように見てるのか、あるいは敬愛以外の愛なのか……
高山紗代子
だから……
高山紗代子
だから……今しばらくは、今のままで努力します。トップを目指す一人のアイドルとして。
高山紗代子
いつか遥かなる海を渡り、次の世界が見えたら……私自身で、私の思いを理解できるかも。
高山紗代子
ですから、私をこれからも見守ってください。トップに至るための試練をください。
高山紗代子
……
高山紗代子
正に、乱文乱筆になってしまいました。面と向かって口にしないんだから、纏まると考えてたのに。
高山紗代子
それでは、私の『片便り』はこれで終わります。
高山紗代子
お返事を『書いて』とか『聞かせて』とは言いません。ただ、私の思いを伝えたかっただけなので。
高山紗代子
年始は冷え込むと予報が出ています。くれぐれもご自愛ください。
高山紗代子
プロデューサーは私にとって……もとい、私たちにとって必要な人なんですからね。
高山紗代子
……12月29日。高山紗代子……敬具。
(台詞数: 36)