
松田亜利沙
「んー、今日はどうしましょうね……」

松田亜利沙
アイドルとしてはお休み今日、自由に使えるこの時間をどうしようか考えていた。

松田亜利沙
いつもなら劇場に向かい、歌うアイドルちゃんからパワーをもらいにいくのだけど、

松田亜利沙
今日は なんかゆっくりしたい気分だった。

松田亜利沙
「……久しぶりに、あそこに行ってみましょうか」

松田亜利沙
私の家から歩いて数分にあるケーキ屋、『Bear』

松田亜利沙
どうして『Bear』なのか、入ってみればわかります。

松田亜利沙
「こんにちはー」店の扉を開けると、カランコロンとドアベルが心地よい音色を立てる。

高木社長
「おや、亜利沙ちゃんじゃない。久しぶり~」

松田亜利沙
調理場から出てきた男性。このお店の店長さん兼パティシエだ。

松田亜利沙
口髭と顎鬚をもっさり生やし、二の腕とか肩幅が私の倍以上の体格。

松田亜利沙
こんな素手で赤カ○トと戦えそうな腕によって、美味しいケーキをつくっているのだ。

松田亜利沙
「店長さん、お久しぶりです!」

松田亜利沙
店内を見回し、以前と変わらないお菓子の家を思わせる店内。

松田亜利沙
………に、似つかわしくないものが、私の目に入ってきた。

松田亜利沙
お店の壁の一部に、私の特大ポスターが貼られてあったのだ!

松田亜利沙
しかも丁寧にラミネート加工がしてあり、ポスターの隣の用紙には店長の文字で、

高木社長
【地元が生んだスーパーアイドル、松田 亜利沙ちゃんを応援しよう!】と書いてあった。

松田亜利沙
「ちょっ!店長さん、なんでありさのポスターが貼ってあるのですか!」

高木社長
「えっ?お店の常連の亜利沙ちゃんがテレビで頑張ってるのを見てて、」

高木社長
「元気もらってるのよ~。その姿を、みんなに知ってもらいたくて貼ってるの」

松田亜利沙
「店長さん……。亜利沙のこと見てるんですね」

松田亜利沙
「とっても嬉しいです!ムフフ♪」

松田亜利沙
そして店長さんからのお願いで、ポスターに赤色のマジックで自分のサインを書いておいた。

松田亜利沙
店長さん、すごく喜んでいた。……こういう瞬間は、私はアイドルなんだなと実感する。

松田亜利沙
「それじゃ店長さん、いつものイチゴのショートケーキをお願いします。あとアイスティーを」

高木社長
「いつものセットね、すぐ用意するから~」

松田亜利沙
この店でよく頼むケーキを注文し、お店の奥にある席についてケーキが来るのを待つ。

松田亜利沙
「さて、と」

松田亜利沙
私は自分のスマホとスケジュール帳を取り出して、

松田亜利沙
色んなアイドルちゃんの予定を調べ、スケジュール帳に書き込んでいく。

松田亜利沙
これは私がまだアイドルになる前にやっていた、少し贅沢な一時。

松田亜利沙
そして思い出す。

松田亜利沙
はじめてプロデューサーさんに会ったのも、このお店だった。

松田亜利沙
《すごく楽しそうに見えますが、何をされてるのですか?》

松田亜利沙
……言葉からしてナンパと思われ、店長さんに摘み出されてましたが。

松田亜利沙
でも、その事件があったからこそ、今の私がある。

松田亜利沙
目をとじて、心で「ありがとう」と呟いた。

高木社長
「おや、いらっしゃ~い。今すごい人がお店にいるよ~」

松田亜利沙
別のお客さんが入ってきたようだ。その人は、私を見るなり駆け寄ってきた。

松田亜利沙
女の子「あ、あの!松田 亜利沙さんですよね!」

高木社長
「亜利沙ちゃん。この子、亜利沙ちゃんのファンなの」

松田亜利沙
女の子「このお店に通っていたら、いつか亜利沙ちゃんに会えると思って!」

松田亜利沙
女の子「一緒にアイドルを語りたいなって、あっ!でもまずはサインを!」

松田亜利沙
……今日はのんびりしたいと思いましたが、

松田亜利沙
今からとても熱く、時間が経つのが忘れてしまう日になりそうです。

松田亜利沙
はじめてプロデューサーさんにスカウトされた日のように……♪

松田亜利沙
「ムフフ♪ありさでよければ、アイドルちゃんについて語り合いましょう!」

松田亜利沙
「そうですね、ありさが今 注目しているアイドルちゃんは……!」
(台詞数: 49)