松田亜利沙
アイドル、それは……
松田亜利沙
アイドル、それは…自分が『演じる』アイドルとしての存在を、高みに運んでいくようなものです。
松田亜利沙
アイドルちゃんの姿は、夢や希望を振りまくために大きく輝くものでなければならないのです。
松田亜利沙
……地獄の責め苦に、ひたすら巨大な岩を転がして山の上に運ぶのがあるそうです。
松田亜利沙
頂上に着いて一息つけば、次の瞬間岩は下まで転がり落ち、また最初からやり直し。
松田亜利沙
……トップに辿り着くまでの辛さ。辿り着いてもすぐにその結果を失う虚しさ。そして、徒労感。
松田亜利沙
……アイドルちゃんを志しても、挫折する子は多いです。そもそも、憧れても挑みはしないもの。
松田亜利沙
……
松田亜利沙
劇場に来るまでのありさは、ただのアイドルちゃん好きの一人でした。
松田亜利沙
憧れていた春香さんのいる事務所が、新しく劇場を立ち上げるなんて話が無かったら……
松田亜利沙
ありさは今も、テレビや公演を観て、雑誌やネットで情報を集め、纏めることで満足してました。
松田亜利沙
……正直ありさは、歌は上手くないです。運動神経も無いし、ルックスも十人並みです。
松田亜利沙
あの日オーディションを受けたのは、アイドルになれば今まで知らなかった情報が知れるかも!
松田亜利沙
……と言うよりは、一度はアイドルちゃんの気持ちを知りたかったから、という好奇心でした。
松田亜利沙
……でも、不思議なんです。
松田亜利沙
アイドルになっても隠し切れなかった「アイドルちゃん好き」の一面は、斬新と話題になりました。
松田亜利沙
CDやダンスの完コピをしていたので、ステージでのファンの皆さんのウケも最高でした。
松田亜利沙
ソロ曲までヒットして、CMもわけの分からないうちに大騒ぎになりました。
松田亜利沙
いえ、「わけの分からない」というのは正しくないです。
松田亜利沙
……ありさのファンの方だけでなく、劇場の誰かのファンの方まで買ってくれたんです。
松田亜利沙
……劇場からスターが出れば、劇場全体が盛り上がる。自分の応援してる子のためにもなる。
松田亜利沙
……ありさが一人で『松田亜利沙』をスターにしたんじゃないです。
松田亜利沙
もちろんプロデューサーや仲間もいますが……「誰かのファン」だった人も、大きいんです。
松田亜利沙
……だから、ありさは。
松田亜利沙
……だから、ありさは。他のアイドルちゃんが居る限り、アイドル業界を盛り立てたいんです。
松田亜利沙
『誰かのファン』に高みに連れて来てもらえました。次は、少しでも多くの子を連れていきたい。
松田亜利沙
事務所の意向とか、相手がありさをどう思っているかは関係ないんです。アイドルちゃんは平等!
松田亜利沙
……
松田亜利沙
……それでも、ありさは時々、どうしようもなく寂しいんです。
松田亜利沙
憧れていた春香さんよりも……色んなことを教えてくれた桃子ちゃん先輩よりも、高みに居ます。
松田亜利沙
劇場のメンバーも、入れ替わってます。女優に転向したり、結婚したりで去った仲間もいます。
松田亜利沙
アイドル番組で盛り上げても……翌月にはアイドルを辞めてる子もいます。
松田亜利沙
……
松田亜利沙
……ありさは、今でもアイドルちゃんが大好きです。それに、夢や希望をあげられると信じてます。
松田亜利沙
でも時々……本当はアイドルを極めるなんて、虚しいことじゃないかって疑念が湧くんです。
松田亜利沙
『創り上げた』姿を高みに登らせるのは苦難。登り詰めても得るものは無いかもしれない。
松田亜利沙
アイドルに憧れて門をくぐっても、アイドルが大嫌いになって辞めていく子もいる筈です。
松田亜利沙
……上手く言えないんですが……
松田亜利沙
アイドルとしてやっていける能力があるかの不安は、もう有りません。もう高みに来たんですから。
松田亜利沙
でも、アイドルをやっていることの不安は、多分これからも無くならないと思うんです。
松田亜利沙
だから、お願いです。
松田亜利沙
ありさに、『アイドルを楽しんでいい』って言葉を、掛けてほしいんです。それがありさの望みです
(台詞数: 42)