周防桃子
今日は準決勝の組み合わせを決める日。
周防桃子
桃子は会場に一番乗りして、その時を待っていた。
周防桃子
まず春香さんがやってきて、次に可憐さんが、最後に、だいぶ遅れて美希さんが。
周防桃子
これで、準決勝の出場者が全部そろった。
周防桃子
くじ引きのやり方は同じで、引いた数字の1番と2番、3番と4番の人がそれぞれ対戦する。
周防桃子
そして、数字の小さい方が先攻、数字の大きい方が後攻になるのも、これまでと変わらない。
周防桃子
桃子は一回戦の時と同じように、くじ引きの準備ができると、いち早く前に陣取った。
周防桃子
くじを引くように言われて、ボールが入っている箱の中に手を入れる。
周防桃子
引き出したボールに書いてある数字は…2番。
周防桃子
2番。桃子の順番は、前の日の後攻だね…。
周防桃子
次にくじを引きにきたのは、可憐さん。どうやら、春香さんが順番をゆずったみたい。
周防桃子
可憐さんが引いたのは、3番。
周防桃子
二日目の先攻だから…桃子の相手は、春香さんか美希さん。
周防桃子
どっちが選ばれても、桃子より実力がはるかに上の強敵が相手となる。
周防桃子
そして次は、可憐さんの後についていた春香さんの番。
天海春香
「…1番です!」
周防桃子
これで決まった。一日目は春香さんと桃子、二日目は可憐さんと美希さんの組み合わせ。
天海春香
「桃子ちゃん。よろしくね。」
周防桃子
「うん!よろしくね、春香さん。」
周防桃子
あくまで、にこやかに。春香さんとあいさつを交わして。ついでに握手もした。
周防桃子
強い相手に当たっても、何でもないようにふるまうくらいの余裕は、今の桃子にだってある。
周防桃子
最後に、スケジュールや注意事項の確認をして、桃子は会場を後にした。
周防桃子
桃子と春香さんの対戦は明日になるから、時間をムダにしている余裕はない。
周防桃子
そのまま劇場の外に出ると、貴音さんを乗せたタクシーが、劇場の前で待っていて。
周防桃子
そして、前の日と同じように、練習場への帰りの車が貴音さんとの話の場となる。
周防桃子
「対戦相手は、春香さんになったよ。」
周防桃子
桃子が言うと、貴音さんは特別おどろいた様子なく。むしろ、うれしそうに。
四条貴音
「そうでしょう。そうでなくてはなりません。」
周防桃子
そんなことを言うので、桃子はあきれてしばらくものが言えなかった。
周防桃子
「さんざん春香さんの怖さとか語ってたのに、なんでそんなにうれしそうなの…?」
周防桃子
桃子の責めるような口調にも、貴音さんはすまし顔のまま。
四条貴音
「桃子は、美希との決戦を望んでいるのでしょう?」
四条貴音
「身の丈を超える望みを叶えようとする者には、天は試練を与えるものですよ。」
四条貴音
「そして、その試練こそが血肉となって、望みに合った身の丈に桃子を成長させるのです。」
周防桃子
…貴音さんの言ってることは相変わらずむずかしい。でも、意味としては良く分かる。
周防桃子
一回戦は必死なだけだったけど、静香さんに勝ったことは、桃子に自信を与えてくれた。
周防桃子
あんなにすごい人たちが相手でも、桃子にだって勝ち目はあるんだって。
周防桃子
ただ一人、美希さんだけには、まだその自信を持ててはいないけど…。
周防桃子
でも、春香さんを倒せば、桃子にも美希さんと戦えるって自信がつくと思う。
周防桃子
もちろん、春香さんは簡単な相手じゃない。貴音さんの助けがあっても、勝てるかはわからない。
周防桃子
それでも。この時点で美希さんに当たって、蹴散らされるよりは。
周防桃子
そして、桃子とほぼ互角の実力の可憐さんと当たって、組み合わせに「恵まれる」よりは。
周防桃子
…うん。この組み合わせは、まちがいなく最善だった。
四条貴音
「ふふっ…。良き顔つきになってきましたね、桃子。」
周防桃子
桃子の心の変化が顔に出ていたのか、貴音さんがそんなことを言ってきた。
四条貴音
「春香との対戦で不安を覚えているかと思いましたが、杞憂だったようです。」
四条貴音
「ならば、我々がすべきことはただ一つだけ。」
周防桃子
「…練習、だね?」
四条貴音
「はい。」
周防桃子
その後は、練習場まで一言もなく。桃子と貴音さんの間には、それ以上の言葉は必要なかった。
(台詞数: 50)