周防桃子
「……ううっ、逆に追い詰められるなんて」
馬場このみ
「おーっほっほっほ!セクシーキャッツのセクシーさの前ではリズム・ザ・ピーチも子供同然ね!」
周防桃子
「い、粋がっていられるのも今のうちなんだからっ!」
周防桃子
「……っ、まだなの、これ以上の時間稼ぎは」
中谷育
「お待たせ!受け取って、ピーチ!DJエッグ特製の新しいミュージックだよ!」
周防桃子
「エッグ!
周防桃子
「エッグ!……って、べ、別に私は待ってなんか」
中谷育
「もう~、ピーチはいつもそうなんだから」
周防桃子
「違うし!でも、エッグがどうしてもって言うならそのミュージック使ってあげても……」
馬場このみ
「ちょっとぉ!私を無視しないでくれる!?」
周防桃子
「あ、ごめ~ん。あまりにもちょろそうだったから、つい」
馬場このみ
「きーーっ!なんですって~!」
周防桃子
「いくよ、エッグ!」
中谷育
「うん!ミュージックスタート!」
馬場このみ
「な、なに!?このリズムは!?このビートは!?」
周防桃子
「すごいよ、エッグ!私、こんなにウキウキした曲、初めてだよ!」
中谷育
「えへへ、ピーチのためにがんばっちゃった!さぁ、決めちゃって!」
周防桃子
「うん!行くよ……メテオストライク・ビーーート!」
馬場このみ
「ぎえぴーーーーー!」(チュドーン!!)
中谷育
「やったね、ピーチ!」
周防桃子
「うん!でも、私たちの戦いはまだまだこれからなんだから!!」
馬場このみ
……
馬場このみ
……カーット!
周防桃子
「お疲れさま、プロデューサー。まだまだ現役でもいけるんじゃない?」
馬場このみ
地面に這いつくばったままの私の肩を桃子ちゃんが優しく叩く。
中谷育
「ホント、私、びっくりしちゃった!台本貰ったのさっきでしょ?」
馬場このみ
「ありがと。まぁ、ちょっと前まで実際に現役だったしね」
馬場このみ
身体は29歳とはいえ、つい最近まで24歳だった心だ。ダンスは無理でも演技なら何とかなる。
馬場このみ
それにようやくこの身体との付き合い方も分かってきた。今晩はあったかいお風呂が必要そうだ。
周防桃子
「それにしても、今日がおに……チーフじゃなくて助かった。急な出演なんてできないもの」
中谷育
「さすがに、セクシーキャッツ役はね……。でも、やってみたら面白かったかもだよ」
馬場このみ
今回の話の導入部分でやられる役として出るはずだった役者が急きょ来れなくなった。
馬場このみ
それでも今日中に撮りたいという監督の意向の結果、元アイドルの私に白羽の矢が立ったのだが…
馬場このみ
「勉強ついでにって言われて2人を任されたんだけど……まさか知ってたんじゃないでしょうね」
馬場このみ
3人で宙を見上げる。まさかとはいう思いはあるが、疑念は晴れない。
馬場このみ
「それよりもこのドラマ、子供向けなのに大人にも人気があるらしいじゃない!すごいわね!」
周防桃子
「私が主演なんだもん!当然だよ!」
中谷育
「そうだよね!近くでいつも見ているんだけど桃子ちゃんの演技、引き込まれるちゃうもん!」
馬場このみ
身体を傾けて桃子ちゃんの顔をのぞきこんで微笑む育ちゃんと、身体ごとそっぽを向く桃子ちゃん。
馬場このみ
身長こそ凸凹になった2人だが、その関係は5年前よりさらに親密になっているようだ。
馬場このみ
2人の様子をほっこりして眺めていると、監督から桃子ちゃんにお呼びの声がかかる。
周防桃子
行ってくるね、と軽く手を上げて駆けていく桃子ちゃんを2人で見送った。
中谷育
「……ほんと、すごいなぁ」
馬場このみ
監督と打ち合わせをする桃子ちゃんを見て、育ちゃんがぼそりと呟いた。
馬場このみ
「育ちゃんも劇団経験者だったわよね。念願のお仕事なんじゃない?しかも桃子ちゃんと一緒で」
中谷育
「えっ……あ、うん。……そうだね」
中谷育
元気に返事をした育ちゃんだったが、すぐに浮かない顔になる。
馬場このみ
「どうかしたの?」
馬場このみ
俯く顔をのぞきこむと、育ちゃんは意を決したように口を開いた。
中谷育
「……ねぇ、プロデューサーさん、相談に乗ってくれないかな?」
(台詞数: 50)