中谷育
ふんふんふふ〜ん♪
中谷育
……うん、これでいいかな? きれいに塗れてるよね!
周防桃子
育、今度のライブでのパートについて……、
周防桃子
育、今度のライブでのパートについて……って、何してるの?
中谷育
あっ、桃子ちゃん! みてみて! いちご味のリップだよ!
周防桃子
ふぅん……そういえばあったよね。そういう子供向けのメイク道具みたいなもの。
中谷育
どう? わたし、おとなっぽくなったでしょ?
周防桃子
…育。そうやって背伸びしようとしてる時点でまだまだ子供だよ♪
中谷育
……むっ。それをいうなら桃子ちゃんだって踏み台で自分を大きく見せようとしてるよね?
周防桃子
あれは大人と対等に渡り合うためにやってるだけ。ただポーズがしたいだけの育とは違うからね。
周防桃子
本当に大人だと思われたいなら、まず年相応に弁えた言動が出来るようになってからだよ。
中谷育
(む〜……言ってることはまちがってないんだけど、なんかくやしい……。)
中谷育
(なんとかして桃子ちゃんを見返したいけど……どうしよっかな……。)
中谷育
……………。
中谷育
(……そうだ! この前莉緒さんに教えてもらったのやってみようかな♪)
中谷育
(えっと、確か莉緒さんは……、)
中谷育
『まずは何でもいいから相手の気を逸らすのよ。“あっ、プロデューサーくんだ!”みたいにね。』
中谷育
『それで相手がそっぽを向いたら、すかさずホッペにチュッ! ってしちゃいなさい!』
中谷育
『これで大抵の人はビックリするだろうし、加えて育ちゃんを見直してくれるんじゃないかしら?』
中谷育
(……って、言ってたかな?)
中谷育
(……まさか桃子ちゃん相手に使うことになるとは思ってなかったけどね。)
中谷育
(……まぁ、桃子ちゃん相手なら軽いイタズラくらいで済むかもだし、ちょっとくらい良いよね?)
周防桃子
……育、さっきから何をブツブツ言ってるの?
中谷育
……っ!? ……わ、わたし……声にでてた……?
周防桃子
何を言ってるのかは聞き取れなかったけどね。それじゃライブパートについて……、
中谷育
…あっ、プロデューサーさんだ!
周防桃子
えっ!? お兄ちゃん来てたの!? どこどこ!?
中谷育
(……桃子ちゃんが横向いた! 今がチャンスだね!)
中谷育
……………。
中谷育
(でも……いざその時になると、ちょっとはずかしいかも……。)
中谷育
(……ちょっとだけ……ほっぺにちょっとするだけ……。)
中谷育
(……それじゃいくよ、桃子ちゃん♪)《スッ…》
周防桃子
《クルッ》ねぇ、育。お兄ちゃんなんてどこにも……、
周防桃子
《クルッ》ねぇ、育。お兄ちゃんなんてどこにも……むぐぅっ!?
中谷育
んむっ………!!?
周防桃子
……ぷはっ! い、いい……育!? いきなり何するの!?
中谷育
ご……ごめん、桃子ちゃん! ほっぺにしようとしたのについ……。
周防桃子
もろに口同士だったんだけど…!
周防桃子
……それで、何でこんな踏み込んだドッキリを仕掛けようと思ったの?
中谷育
莉緒さんに『大人っぽく見られるにはどうすればいいの?』って聞いたから……。
周防桃子
……あー、なるほどね。……うん、明らかに聞く人を間違えてるよねそれ。
中谷育
うん……ごめんね桃子ちゃん。はじめての人がわたしなんかで……。
周防桃子
……育、桃子は別に–––––––、
中谷育
……桃子ちゃん。わたし、気持ちが落ち着くまで外出てくるね。《ガチャ》
周防桃子
《バタン》あ、育! ちょっと!
周防桃子
……いっちゃった。
周防桃子
……自分からしておいて逃げるなんて……いきなりされた桃子の気持ちにもなってよね……。
周防桃子
……それにリップ塗り過ぎ。桃子の口にも移っちゃってるよ……後で洗わないと……。
周防桃子
……………。
周防桃子
……やっぱりもう少しこのままでいようかな♪ せっかくの育からの初めてだし……ふふっ♪
(台詞数: 50)