高木社長
460年後の日本。少子高齢化が止まることなくついに労働人口が5000万人を下回った
高木社長
深刻な労働力不足の結果、日本経済は崩壊。貨幣は文字通り無価値となった
高木社長
さらに土地を管理できるだけの余裕がなくなった土地所有者も比例して増加
高木社長
荒廃した土地を有効活用する目的として政府は墾田永年私財法を施行
高木社長
しかしそれがさらなる混乱を生んだ。多くの人が我先にと土地を拡大していき
高木社長
多くの土地を得た者は独自のルールで土地を自治しはじめた
高木社長
もはや法は意味をなさなくなり、日本という国は既にその形を失っていった
高木社長
こうした事態を打破するため、政府は極秘裏にある計画を始動させたーーー
高木社長
「いくらなんでも徴税が重すぎます!!おねがいです!!どうか勘弁してください!!!」
黒井社長
荒れ果てた畑の上に立っていたのは初老の男とスーツ姿の男だった
黒井社長
初老の男はみすぼらしい格好をしており、対比されたスーツ姿はより整然として見えた
高木社長
「妻は寝たきりな上、私も身体が限界なんです……黒井様、どうかご慈悲を……!」
黒井社長
「慈悲などない。納税が無理なら冬の玄界灘に漁に行って稼いでもらうしかないな」
黒井社長
「船や道具がボロい分安全性は皆無だろうが……元より老い先短いんだ。問題あるまい」
高木社長
「そ……そんな…………」
黒井社長
「悪魔」。初老の男の脳裏に浮かんだ言葉がこれ以上ない程に的を射ているように思えた
黒井社長
「文句があるなら即刻この領地から立ち去ればいい」
黒井社長
「まぁお前たちのような老害どもを受け入れる所はないだろうがな!!!フハハハハ!!!!!」
中谷育
「コラーーー!!!!!!」
黒井社長
不意に近くで聞こえた小さな女の子の怒声によって2人の心臓は一気に飛び上がった
高木社長
咄嗟に2人が声の方に目をやる
中谷育
いつの間に近付いていたのだろうか、そこには10歳ほどの女の子ーー幼女が仁王立ちをしていた
黒井社長
「ほぅ、子どもとは今時珍しいな。だが私の領地に子どもがいるという報告はなかったはずだが…」
中谷育
「ダメだよおじさん!弱い者いじめしちゃ!!」
黒井社長
「おじ………!!!!」
黒井社長
黒井は最近歳が気になり始めていた
黒井社長
「どこぞのガキかは知らないが…………少々教育が必要なようだな」
黒井社長
激情を無理に押さえこみながら幼女に近づいていく黒井
中谷育
だが男が冷静でないことは振りかざした拳が物語っていた
高木社長
「に、逃げーーー」
黒井社長
言い切る間も無く振り下ろされる拳
中谷育
その拳は一切の躊躇なく幼女の頭を捉えたーーーーはずだった
黒井社長
「……………なっ!?」
黒井社長
拳は当たる寸前で見えない壁に阻まれた。"比喩"ではなく確かな質量をもって
黒井社長
幾度となく力を込めるがなぜかびくともしない。さらに拳に込められた力が徐々に失われていった
黒井社長
黒井の胸中には何故か"殴れない"という感情と"殴りたくない"という感情が同時に渦巻いていた
中谷育
"Little girl used as a weapon project"
中谷育
対戦闘用幼女計画ーーー通称LIGUSAW計画
中谷育
政府は幼女の万人を魅了する強力な魅力に着目、法に代わる抑止力として軍事利用することにした
中谷育
幼女の魅力を最先端の科学を用いることで強化。相手の心理に直接魅力を伝達させることが可能に
中谷育
これにより相手の心を完全に支配し、戦意を削ぎ無力化させることができるようになった
中谷育
さらに魅力に質量を持たせることに成功。感情のない物理的な攻撃に対しても対応が可能となった
中谷育
「…………おじさん、悪い人なんだね?」
中谷育
怒りが混じった幼女の声に呼応するかのように、周囲を渦巻き、逆巻きはじめる魅力
中谷育
「悪い人は…………飛んでっちゃえーーーーー!!!!!!!!」
黒井社長
瞬間、魅力が黒井の全身を襲った
黒井社長
戦意を削がれた黒井に成す術はなく、押し潰されるような衝撃と共に遥か後方へと吹き飛ばされた
中谷育
舞い上がる土煙の中、悪を排除した事を確認した幼女は
高木社長
初老の男に顔を向け、とびきりの笑顔を見せた
中谷育
「ーーもう大丈夫だよ、おじいさん!」
(台詞数: 50)