中谷育
「うぅ、変に意識しちゃうな…これも桃子ちゃんのせいだ…」
周防桃子
(事務所にて)「それで猛スピードで車を走らせてた男は何かを轢いた気がしたの」
大神環
ゴクリ…
周防桃子
「車を止めて降りて確認したら…息も絶え絶えの黒猫がいたのよ」
中谷育
「黒猫さん、かわいそう…」
周防桃子
「でも男は面倒臭いとそのまま車を走らせた…」
大神環
「ヒドイぞ…」
周防桃子
「しばらくすると男は自分の車をずっと追いかけて来るものに気付いたの」
中谷育
「え…」
周防桃子
「それは徐々に距離を詰めて来る。2つの怪しい光を発しながら…」
大神環
「ひぃ…」
周防桃子
「そして男の車に追いつき…追い越して行った」
中谷育
「あれ、追い越した?」
周防桃子
「それはクロネコヤマトの宅急便の車だったとさ」
中谷育
「何それ!わたし、てっきり怖い話かと…」
周防桃子
「桃子、怖い話をするなんて一言も言っていないけど?」
大神環
「だまされたぞ…」
中谷育
なんて事が事務所であったけど…オチはともかく聞くんじゃなかった…
中谷育
この道、街灯も無いしほとんど人が通らないんだよね…
中谷育
いつも通る道だけど…今日は特に怖く感じるよ…
中谷育
「あ、あれ?道脇に何かある?」
中谷育
「これって…黒猫の死体だ…」
中谷育
かわいそう。だけど埋めてあげる道具もないし、この辺舗装されてるし…
中谷育
明日になれば市役所の人がやってくれるよね?
中谷育
あ、もうこんな時間。早く帰らないとお母さんが心配するね。
中谷育
「じゃあね、黒猫さん」
中谷育
(しばらくして)やっぱり悪い事しちゃったかな?
中谷育
でもわたしにできる事なかったし…
中谷育
あれ、なんだか後ろから気配を感じるよ?
中谷育
でも後ろを見ても誰もいない…
中谷育
「やだ、怖い…」
中谷育
走ろう!もう少し行けば街灯の明るい道に出るし。
中谷育
ハァ、ハァ…走ってるのに気配がまだするよ。でもやっぱり後ろには誰の姿も見えない…
中谷育
「あ、お月様がある。いつの間か出ていたんだね」
中谷育
それもまん丸の満月が2つも。
中谷育
それもまん丸の満月が2つも。2つ⁉︎
中谷育
わたしがその異様さに足がすくんで立ち止まると気配がどんどん近付いて来た。
中谷育
それに合わせ、2つの満月も大きくなる。
中谷育
そして…すぐ側まで気配を感じる距離になってわたしは理解した。
中谷育
気配の持ち主は見えなかったんじゃない。
中谷育
わたしが気付かなかっただけなんだ…
中谷育
あの黒い毛並みを…
中谷育
まるで闇に紛れる事が目的みたいな黒い毛並みを…
中谷育
そして2つの満月と思ったのはそいつの目なんだ…
中谷育
やっと分かった…2つのギラギラした目と漆黒の毛並みを持つそいつは…
中谷育
見上げる程の大きさの黒猫だった…
中谷育
それがわたしの目の前にいる…
中谷育
何故こんなのがいるのか?何故わたしを追いかけたのか?さっきの黒猫の死体と関係あるのか?
中谷育
頭の中は疑問だらけ。もちろん答えなんて分からない。ただ一つ、今のわたしでも分かる事は…
中谷育
その巨大な黒猫の血のような真っ赤な口の中に飲み込まれた事だけである…
(台詞数: 50)