たまごのたまご
BGM
Cut. Cut. Cut.
脚本家
nmcA
投稿日時
2016-09-08 00:01:04

脚本家コメント
many years later
更に歳を重ねた中谷育のお話
「おとなのたまご」と「たまごのおとな」の続きであり、最後のお話。
是非そちらもどうぞ。
お付き合いいただきありがとうございました。
第1部【おとなのたまご】http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/800000000000086274/seq/86
第2部【たまごのおとな】 http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/800000000000086274/seq/89

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中谷育
『おかしいと思わない?私が主役じゃないなんて!?』
中谷育
目の前に座る親友はぶつぶつ言いながらパンケーキにフォークを刺していた。
中谷育
「後輩は育てていかないと。お手本にするために監督は桃子ちゃんを呼んだんじゃないの?」
中谷育
『そんなの、分かってるって……』
中谷育
「私も分かってる。桃子ちゃんがそれぐらい分かってるってこと」
中谷育
私の言葉に親友は顔を真っ赤にして俯いた。
中谷育
『それより、育のほうはどうなのよ?最近』
中谷育
「楽しいよ?お仕事にも順調に復帰できたし」
中谷育
「でも、昔と違って外に出れないのが寂しいかな。局内ばっかりだし」
中谷育
『ふふ、後輩はちゃんと育てていかないとね』
中谷育
「もう、桃子ちゃんったら!」
中谷育
昼下がりのオープンカフェに二人の笑い声がこだまする。
中谷育
『私たち、出会ってから、かなり時間が経ったね』
中谷育
ブラックコーヒーを啜って親友は息を一つ付いた。
中谷育
『あの時は、育とこんな歳になるまで仲良くしているなんて思わなかった』
中谷育
「それは、私も同じだよ」
中谷育
……正確に言えば同じじゃない。あの時の私は、今の年齢の自分を想像できていなかったから。
中谷育
ううん、みんながそれぞれの道を歩むときも、自分の将来像なんてわからなかった。
中谷育
……
中谷育
『ねぇ、育?昔の自分に会えるとしたらなんて声かける?』
中谷育
半月状になったパンケーキを切りながら、親友が私に問いかける。
中谷育
『だって、今、変なこと考えてたでしょ?そんな顔してたよ』
中谷育
……もう、この親友には敵わない。
中谷育
「そうだね……」
中谷育
色んな自分を思い出す。
中谷育
大人になりたくて背伸びばかりしていた自分。
中谷育
大きくなって、アイドルとしてのアピールポイントに悩んだ自分。
中谷育
私はいつまでもたまごのままで、殻を破ることができなくて、
中谷育
それでも……みんなと一緒に頑張った自分。その隣には
中谷育
「そうだね……
中谷育
「そうだね……桃子ちゃんと仲良くね、かな」
中谷育
目の前からむせる音が聞こえる。
中谷育
『育はこの後どうするの?』
中谷育
「このあと?娘が返ってくる時間だし、まっすぐ帰ろうかと思ってるけど?」
中谷育
『じゃあさ、うちの娘を呼ぶから一緒に育の家で晩御飯作らない?」
中谷育
二人で並んで歩く。日が傾き、昔は小さかった二人の影法師も長く細くアスファルトに伸びている。
中谷育
『もう、育の家に来てるって。私の考えが読まれているのかな』
中谷育
「いつも遊びに来てるから、今日もそうだっただけでしょ」
中谷育
『……娘たちも私たちのようにずっと仲良くなれるといいね』
中谷育
私の家の前で桃子ちゃんが私を見ながらポツリとつぶやく。
中谷育
「……
中谷育
「……そうだね!」
中谷育
玄関のドアを開けると二つの足音が出迎えた。
中谷育
子供たちはいたずらっぽくニヤニヤと笑っている。
中谷育
『せーのっ!』
中谷育
『おかあさん!』
中谷育
『わたしたち、アイドルになりたい!』
中谷育
玄関を開けた私達を待っていたのは
中谷育
おとなのたまごだった、あの頃のわたし達の姿だった。

(台詞数: 49)