深緑の大人会談
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2016-01-08 18:31:30

脚本家コメント
おとなのかいだんのーぼるー。
前作 大猫子猫
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/1300000000000031424/seq/417

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北沢志保
お店に戻ると、子供たちが難しい顔をしながら話している姿が目に入った。
中谷育
「……めるもん。絶対」
周防桃子
「やめた方がいいと思うよ?」
中谷育
「大丈夫だよ」
北沢志保
頬を膨らませながら何かを主張する子供と――
周防桃子
「まあ、育がやるっていうなら止めないけどね」
北沢志保
子供にしては大人びた感じの、やっぱり子供。
中谷育
「すみません!」
北沢志保
まっすぐ元気に挙げられた手が私を呼ぶ。
北沢志保
「はい?」
中谷育
「コーヒーください!」
周防桃子
「本当にいいの?」
中谷育
「もちろん!」
周防桃子
「……じゃあ、桃子はココアで」
北沢志保
「畏まりました」
北沢志保
踵を返して、厨房へ。
北沢志保
ふと懐かしさを覚えた。
北沢志保
私にも、あの子の様に背伸びしていた時期があったな、と。
北沢志保
周りが赤やピンクを好んで選んでいるのに、敢えて質素な無彩色を選んだり、
北沢志保
俗に言う『可愛い系』と称される物を執拗に避けたり。
北沢志保
他とは違う、他より秀でていると証明する為に、まだ未熟な視野で葛藤したものだ。
北沢志保
その結果――思い知らされる。
北沢志保
「お待たせしました」
北沢志保
己の葛藤と、苦さを堪える意味の無さを。
北沢志保
砂糖とミルクが、どれほど偉大であるかという事を――。
中谷育
「苦い……」
周防桃子
「だから言ったのに……」
中谷育
「うぅ……」
周防桃子
「お砂糖入れて甘くすれば?」
中谷育
「やだ……大人っぽくない」
周防桃子
「……」
周防桃子
「仕方ないなぁ……」
北沢志保
そう小さく囁いて、こちらを見る。
周防桃子
「店員さん、このココア甘すぎだよ」
北沢志保
「え……」
周防桃子
「桃子には合わないなー。だから育が飲んでよ」
中谷育
「え? でも……」
周防桃子
「というか、口の中が甘いから早くその珈琲ちょうだい」
中谷育
「あ、うん」
周防桃子
「……」
周防桃子
「苦い……」
中谷育
「……ココア、おいしいよ?」
周防桃子
「知ってる……」
中谷育
「?」
北沢志保
微笑ましい限り。
北沢志保
あの子たちが大人になって珈琲を飲んだ時、どんな顔をするだろうか。
北沢志保
「……」
北沢志保
素敵な妄想を巡らせていると、時間はあっという間に過ぎていった。
北沢志保
木々は影を伸ばして、店内は段々と橙色に染まっていく。
北沢志保
いよいよ夜が――訪れる。

(台詞数: 50)