周防桃子
桃子はいま自分の部屋の押し入れに隠れている。じっと息を殺して…
周防桃子
なんでこんなことになったんだろう。出来るのならあの日に戻ってやり直したい…
周防桃子
ー数日前・公園ー
中谷育
「桃子ちゃん。あの子、知らない子だよね?1人みたいだし誘ってみる?」
周防桃子
「あんまり知らない子とは遊びたくないけど…育がいいなら…」
中谷育
「ねえねえ、1人?一緒に遊ぼうよ」
周防桃子
育が話しかけたのは公園の隅っこにポツンと突っ立っていた女の子。
周防桃子
これといって特徴がなく表情が乏しい顔をしていた。その頭がコクンと頷く。
中谷育
「わたしは育。あっちは桃子ちゃん。よろしくね」
周防桃子
桃子達は3人で遊んだ。そして…
中谷育
「もうこんな時間か。そろそろ帰らないとね。あなたのお家もこの辺?」
周防桃子
その子はコクンと頷いた。
中谷育
「じゃあ今度わたしの家に遊びにおいでよ。歓迎するよ」
周防桃子
その子は笑みを浮かべて言った…
周防桃子
「あそびにいくヨ…」と…
周防桃子
桃子は一瞬目を疑った。その子が笑った時、口が耳まで裂けたように見えたからだ。
周防桃子
もちろん見間違いだろう。改めて見たら変なところなど無かったし。だから…
周防桃子
そして異変はその2日後に起きた。育が行方不明になったのだ。
周防桃子
それも家にいたところを忽然と姿を消したのだ。
周防桃子
誰かが侵入した形跡もなく、また育が自分で出て行った様子もない。
周防桃子
警察も育の捜索をしているがまるで手掛かりが無いらしい…
周防桃子
でも桃子には胸騒ぎがしてならない…
周防桃子
もしかして今回の事にはあの子が関わっているんじゃないか、と…
周防桃子
…そして桃子はいま押し入れに隠れている。なぜなら…
周防桃子
「なら、桃子の家にもおいでよ」
周防桃子
育と同じように桃子もあの子を誘ってしまったのだ…
周防桃子
もし本当に育の行方不明にあの子が関わっているなら桃子も危ないだろう…
周防桃子
でもこんな事大人に言っても信じてもらえるか分からない…
周防桃子
とりあえず毎晩押し入れに隠れている。この数日はおかしなことはないが…
周防桃子
いつまでもこんな事をしていられない。なんとかしないと…
中谷育
「桃子ちゃん?どこー?」
周防桃子
育⁉︎育の声がする!
中谷育
「桃子ちゃん!わたしだよー!」
周防桃子
育…無事だったんだ…
中谷育
「桃子ちゃーん!出てきてよー!」
周防桃子
「育!桃子はここだよ!」
周防桃子
桃子は押し入れから飛び出した…深く考えもせず…
中谷育
「桃子チャン…ソコニイタンダネ」
周防桃子
「え…育…?」
周防桃子
そして桃子は見た…育と思ったのは…
中谷育
「モウコレハ必要ナイネ…」
周防桃子
それは育の生皮を脱ぎ捨てた…
周防桃子
「ひぃっ…」
周防桃子
ギラギラと血走った目をしながらそれは耳まで裂けた口を開けてこう言った。
中谷育
「遊ビニ来タヨ…」
周防桃子
桃子の記憶はここで途切れた…
(台詞数: 46)