真壁瑞希
どうかしましたか、小さなお嬢さん?
中谷育
え?わたし?
真壁瑞希
お嬢さん以外にいないと思いますが・・・
真壁瑞希
私が指を指しているのはお嬢さんなのですから・・・
真壁瑞希
これでもし私が違う少女の事を言っていたら、とんでもない矛盾が生まれるのですが・・・
中谷育
もう既に生まれていますよ!
中谷育
...顔には満面の笑みを浮かべ、肩を震わせながらわたしはそう答える
中谷育
...たぶん、わたしの顔は笑っているのではなく、引きつっているのかもしれない
中谷育
だって・・・
中谷育
...頬がピクピクと痙攣しているのを感じる
中谷育
だってわたしは大人ですからねっ!!
中谷育
...そんなわたしの表情を見て、マジシャンは少し驚いた表情を浮かべる
中谷育
...ポーカーフェイスを装っていても、長年生きているわたしには、それがわかる
真壁瑞希
え?今何とおっしゃいましたか?
中谷育
だ・か・ら、こう見えてもわたしは大人なんです!
中谷育
...胸を張って得意気にそう主張するわたしの姿は、客観的に見れば相当滑稽であろう
真壁瑞希
最近の子供は、私の時代の子供に比べてませているとは思っていましたが・・・
真壁瑞希
背伸びしてみたくなる年頃ですよね、心中お察しします
中谷育
だ~か~ら~!違うんだってば!
中谷育
こんな見てくれかもしれないけど・・・
中谷育
実際は20代なんだから!
真壁瑞希
そうですか・・・なるほど・・・
真壁瑞希
わかりました、お嬢さん
中谷育
お嬢さん呼びはやめてくれないんですね・・・
真壁瑞希
すみません、貴方の事をなんとお呼びしていいものか、わからなかったので・・・
中谷育
あっ、そっか、まだ名前教えていませんでした、わたし、中谷育です
真壁瑞希
私は真壁瑞希です
真壁瑞希
私もこう見えてアラサーなのです
真壁瑞希
なので私と同じで、見かけの成長が止まってしまった中谷さんに興味を持ちました
中谷育
...わたしが成長しないのは、わたしがコレクターだからで・・・
中谷育
...そして、「あなたを境界に送りに来ました」なんて口が裂けてもいえるはずがなく
真壁瑞希
私と貴方には共通点があります
真壁瑞希
そして、もしかしたら同じ境遇の持ち主なのではないかと、私は考えます
真壁瑞希
中谷さん、貴方はいまから約十年前、誰かに救われたのではないでしょうか?
中谷育
・・・
中谷育
...わたしはその言葉に答える事ができなかった
中谷育
...救われた?
中谷育
...「はい」と答えてしまえばきっと、わたしと彼女の間に齟齬が生じる
中谷育
...救われた?
中谷育
...その言葉にはきっと語弊がある
中谷育
...わたしは、あの日、境界に送ってもらった
中谷育
...そしてこうして、コレクターとして生まれ変わった
中谷育
...『救われた』というよりは、『新しい命を授かった』の方が正しいのかもしれない
中谷育
...恐らく私を境界へ送ったメッセンジャーは、わたしが生きている事を知らないだろう
中谷育
...だから、きっと彼女の認識からしてしまえば、わたしの『命を奪った』事になる
中谷育
「ありがとう、_____お姉ちゃん」
中谷育
...送ってもらう間際、わたしが言った言葉、名前だけは無音で思い出せない
中谷育
...ダメ、全てが曖昧で、、たくさんの死を追体験した弊害なのかもしれない
中谷育
...でも、わたしは救われたんだと思う、だけど、お姉ちゃんは救われたのかな?
真壁瑞希
邪推でしょうか?
(台詞数: 50)