中谷育
ジィー・・・
中谷育
...わたしが生前、最期に連れてきてもらった想い出の場所
中谷育
...ここは素朴な公園かもしれないけれど、特別な場所で・・・
中谷育
...わたしと彼女達の不確かで、朧気な記憶を繋ぎ止めて、肯定してくれる場所
中谷育
...久しぶりに足を運んだわたしは、あるマジシャンを注視していた
中谷育
...どうしてわたしが彼女をガン見しているかについて答えるとするならば・・・
中谷育
...以前、彼女に会った事があるような気がするからではない
中谷育
...そんなことよりも、もっと違う問題が目の前で起こっていた
中谷育
...彼女は死んでいる
中谷育
...今、わたしの目には、はっきりと剥き出しになった彼女の魂が映っている
中谷育
...それは、わたしが今まで送ってきた彷徨える魂達となんら変わりがなくて・・・
中谷育
...彼女もまた、ホームを失って、現世に留まる事になってしまった悲しい魂の様だった
中谷育
...つまり、今、わたしの目の前にいるマジシャンは、境界へ送らなければ行けない対象
中谷育
...わたしは彷徨える魂(かのじょ)を救済しなければならない
中谷育
...でも、わたしは戸惑っていた
中谷育
...だって、こんなケースは今まで生きてきて初めてだから
中谷育
...ジュリアさんならこういうレアケースに遭遇したことがあるかもしれない
中谷育
...ジュリアさんならたぶん、どうしたらいいか知っているはず・・・
中谷育
...そんなもしかしたら、が頭を過る
中谷育
...ダメだ、ダメだわたし!
中谷育
...考えなきゃ、自分で考えなくちゃ!
中谷育
...そう、コレクターとして割り切るのならば、彼女は境界へ送らなければいけない対象
中谷育
...でも、ほんのいままで、そんな彼女は手品を披露して集まった人々を楽しませていた
中谷育
...人々から笑顔を引き出していた
中谷育
...彼女は確かに生きている
中谷育
...生きていながら死んでいる
中谷育
...生きていながら彷徨える魂になってしまっている
中谷育
...どうしたら、そんな切ない姿になれるの?
中谷育
...どうして、こんなに悲しい事が起きるの?
中谷育
...そう考えると、なんだが胸がキュッて
中谷育
...締め付けられるように痛くなる
中谷育
...こんな悲しい事例はわたしの手に余す様にも思える
中谷育
...だから見なかった振りをしてしまえば、他の誰かが対処してくれるかもしれない
中谷育
...でも、わたしにとっての聖地でそんなことをしたくはなかった
中谷育
...ううん、どこで彼女のようなケースに遭遇したとしても同じ事だよね
中谷育
...逃げるなんていう選択肢はない、向き合って救ってあげなくちゃって思う
中谷育
...一つでも多くの彷徨える魂を救済する
中谷育
...それが、コレクターとしてのわたしのスタンスだから・・・
中谷育
...だから、背を背けるなんてありえないよ
中谷育
...それにここで逃げ出しちゃえば・・・
中谷育
...彼女達に会えなくなるような気がしたから
中谷育
...彼女達に合わせる顔も、資格もなくなってしまうって思ったから・・・
中谷育
...だからわたしは向き合います
中谷育
...でも、どうしたらいいか、わからないから・・・
中谷育
...だから、それを思い付くまで、彼女を見続ける事にした
中谷育
...観察をしていれば、何かが掴めると思ったから・・・
中谷育
...とにかく見続けた
中谷育
...どこかで彼女に会った事があるような気がする
中谷育
...ふと、そんなことがわたしの頭を駆け巡る
真壁瑞希
どうかしましたか、小さなお嬢さん?
(台詞数: 50)