中谷育
...今日も、わたしは彷徨える魂を回収してから、ある場所へ行く
中谷育
...そこは、夜空に散らばった星達がよく見える場所
中谷育
...わたしが生まれ変わってから、初めて見た景色
ジュリア
育、また来たのか?
中谷育
うん、ジュリアさんもやっぱりここに来ていたんですね
ジュリア
まあな、あたしにはやらなくちゃいけないことがあるからな
中谷育
わたしも、それを見届けるのが役目のようなものですから
ジュリア
役目じゃないだろ、てか、そんな大層なもんじゃないって
中谷育
...ジュリアさんはわたしと同じコレクター
中谷育
...わたしよりもずーっと前からコレクターをやっている先輩
中谷育
...ジュリアさんは毎日ここに来ては、ギターを片手に歌を歌っている
中谷育
...ある種の『鎮魂歌』の様なものだって教えてくれた
中谷育
...それは『コレクター』として決められた行為ではないけれど・・・
中谷育
...ジュリアさんにとっては、ケジメの様なもので・・・
中谷育
...行為として成立するような、形式的なものになっていた
中谷育
でも、わたしは好きで聞いていますから
ジュリア
そっか、まっ、育の好きにしなよ
中谷育
...ジュリアさんはそう吐き捨ててから、いつものように弦を揺らしてメロディーを奏ではじめる
中谷育
...弦の振動と一緒に伝わってくる音色と
中谷育
...それに共鳴するように発せられる、ジュリアさんの繊細だけど・・・力強い歌声
中谷育
...鎮魂歌は心にまで届いて、浸透して、気付いたら、わたしは涙を流している
ジュリア
なぁ、育は会いたい人には会えたのか?
ジュリア
というか、思い出せたか?
中谷育
...鎮魂歌を歌い終わったジュリアさんは、涙を拭っているわたしに声を掛けてくる
中谷育
ん~・・・それが、まだ思い出せなくて
中谷育
わたしがどんな言葉をその人たちと交わしたのか、とかは鮮明に覚えているんだけど
中谷育
ただ・・・その人たちがどんな言葉をわたしと交わしたのかは思い出せなくて・・・
中谷育
一生懸命思い出そうとしても、名前も、顔も、表情も、全部、ボヤけてて・・・
ジュリア
そっか、それじゃ、進展はないんだな
中谷育
うん・・・
ジュリア
だ、大丈夫だ、育、そんな悲観することでもないと思うぜ?
中谷育
そうかな~?
ジュリア
ああ、だって相手はメッセンジャーとリクルーターってのは確実なんだしさ
ジュリア
いつかどっかで鉢合わせする可能性だってあるかもしれないだろ?
ジュリア
その時に相手の顔をみたらさ、案外、一気に思い出すって
中谷育
でもわたし、コレクターになってから10年経ってるよ?
ジュリア
あー、たしかに・・・でも、ほ、ほら、あたしらほぼ不死身だしさ
ジュリア
それはあっちも変わんないだろ?
中谷育
そうだといいけど・・・
中谷育
ジュリアさんは、今まで生きてきて、忘れちゃった事とかはないの?
ジュリア
ないな
ジュリア
と言いたいところだけど、あたしは育の二倍は生きてるからな~
ジュリア
正直よくわからないな~
ジュリア
あたしは、コレクターとして数え切れないほどの魂を送ってきた過程で
ジュリア
それと同じ数の人生を見てきた訳だしさ
ジュリア
もしかしたら、記憶が無意識の内に混在してるかもしれないな
ジュリア
コレクターは消耗品だ、記憶が絡まって壊れちゃうかもしれないからな
ジュリア
だから定期的に育がきたみたいに、新人がやってくるワケだしな
ジュリア
まっ、あたしはあたしで居続ける為に歌を歌い続けるよ
ジュリア
だから、思い出したい事がわかってるなら、育はそれを大事にしろよな
(台詞数: 50)