中谷育
「わたし生まれ変わりするの!」
中谷育
「生まれ変わりしたらね、次は今よりずっと長く生きるんだ~」
中谷育
スゥーハー
中谷育
...とても懐かしい言葉を思い出しながら、外界の空気を勢い良く吸い込んで
中谷育
...清々しいほどに心地の良い潮風が小さな身体に当たって、わたしの事を攫おうと試みる
中谷育
...でも風がわたしの事を連れ去ろうとするくらい幼いと誤認したとしても、わたしは大人だ
中谷育
...そんな簡単に連れ去れるはずがない
中谷育
...両足を樹幹の様にびしっと伸ばして、潮風に抵抗をしてみる
中谷育
ん~気持ちいい!
中谷育
わたし、生きてるよ~!!
中谷育
...息を吐き出す過程で、水平線の彼方に向かって、両手を広げてそう叫んでみる
中谷育
...生きているんだって主張したかった
中谷育
...もう、貴方は生きていないんですよって否定されたとしても
中谷育
...確かにわたしは現世(ここ)に、存在をして息をしているのだから
中谷育
...主張ぐらいはしてもいいはずだよね
中谷育
...海に隣接した民家からは迎え火が上がっている
中谷育
...それはわたしに今日がお盆だという事を告げていた
中谷育
...この迎え火を目印に、その家の魂達は帰ってくると、人々は信じている
中谷育
...境界へ送られた魂が本当に迎え火を目指して戻ってくるのかはわからないけど・・・
中谷育
...わたしは帰ってくるって信じたい
中谷育
...一年に一度、この期間くらいは帰ってきてもらいたいもん
中谷育
...だって、皆、寂しいと思うから・・・
中谷育
...寂しいって思う気持ちは、生きている人も、死んでいる人も共通だって思うから
中谷育
...だから、この期間くらいはみ~んな一緒に揃って欲しいなっていうわたしの願望・・・
中谷育
...そうじゃないと、わたしが頑張っている意味もなくなっちゃうから・・・
中谷育
...そんなわたしたちの間では、こう言われている
中谷育
...年に一度、家に帰ってくれる魂は、境界に行った魂だけ
中谷育
...現世に留まってしまった魂は帰ってくることができない
中谷育
...キャリアーはメッセンジャーによって、その魂が境界へと送られる
中谷育
...じゃあ、事故とか、自殺とかで死んじゃった人の魂はどうなるの?
中谷育
...そういう魂は現世(ここ)に留まってしまう
中谷育
...現世に残って、彷徨える、悲しい魂になってしまう
中谷育
...それを人々は口を揃えて悪霊とか呼ぶのかもしれないけど・・・
中谷育
...決してそういう訳じゃなくて・・・
中谷育
...彼等はみんな『帰るべき家(ホーム)』を失ってしまった悲しい存在で・・・
中谷育
...そういう魂を回収して境界に送るのがわたしの役目
中谷育
...わたしたちの役目
中谷育
...境界へ送られた魂たちは・・・
中谷育
...こうしてまた、ホームへ帰ることができるようになるから・・・
中谷育
...わたしは『コレクター(収集家)』
中谷育
...わたし自身も一度、境界へ行った
中谷育
...でもこうして戻ってくることができた
中谷育
...生まれ変わりができた
中谷育
...生まれ変わりができなかった魂にも、年に一度帰ってくる権利くらいはあると思うから
中谷育
...だからわたしは彷徨える魂を集めます
中谷育
...一つでも多くの彷徨える魂をホームに帰してあげたいから
中谷育
...寂しい思いはさせたくないから・・・
中谷育
...それに、わたしには会いたい人たちがいる
中谷育
...その人たちに会える日が来るって信じて、わたしはこの仕事を続けます
中谷育
~わたしはコレクター、彷徨える魂を救済します~
(台詞数: 50)