74:如月千早の歌#4
BGM
君だけの欠片
脚本家
concentration
投稿日時
2014-11-12 04:16:34

脚本家コメント
詰め込み過ぎて、最後の締めが消化不良…。
ロバート・ジョンソン「Walking Blues」?年
エリック・クラプトンの1992年のアルバム、「unplugged」の演奏が、とても良い感じです。

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如月千早
挨拶を終えて店を出た頃には、夕方の気配を前に、街は慌ただしさを醸し始めていた。
如月千早
私達の次の演奏の舞台は、昼はダイナー、夜はお酒や音楽を供するバー。
如月千早
店内に満ちた落ち着いた雰囲気と、品の良いテーブルやカウンターの調度品、
如月千早
壁面に飾られた、驚くような大物アーティストのサイン入りアルバムジャケット、
如月千早
駆け出しもいいとこの私達が演じるのは、明らかに役者不足。
如月千早
千鶴さんの存在、加えて今度は、貴音さんも演奏に参加してくれるという、
如月千早
私達三人こそがお試しのおまけ、店からしたらそんな認識だろう。
如月千早
セットリストを見た時の店主の苦笑いが、それを語っていた。
二階堂千鶴
「………元気が有りませんわね。今更緊張して来ましたか?」
如月千早
「はあ、緊張というか……、本当にこの選曲で良かったんでしょうか?」
二階堂千鶴
「あら、あの曲を入れて欲しいと仰ったのは、他ならぬ貴方自身ですわよ?」
如月千早
「それは、そうなのですけど……。」
如月千早
千鶴さんに『詩を書いてみては』と言われたものの、
如月千早
しかし今までそんな事は考えもしなかった私が、いきなり書ける訳もなく、
如月千早
取り敢えずは、心得のある同期の萩原さんに手解きを受けては、
如月千早
試行錯誤しているうちに、ふと過った考え。
如月千早
『私が今まで歌ってきた詩は、果たしてどんな思いから書かれたのか。』
如月千早
萩原さんが言うには、『詩は語感と韻を重視するから、作者の意図を伝えるのは難しい。』
如月千早
『寧ろそれを、読み手の自由な感性で、無限の答えが広がってゆくのが、詩の素晴らしさ。』
如月千早
彼女のその言葉と、店の名を聞いて、私は千鶴さんに申し出た。
如月千早
『この歌を歌わせて貰えまいか』と。
如月千早
千鶴さんは逡巡して、
二階堂千鶴
『宜しいですわ。では、それに合わせて他の曲をリストアップしてみましょう。』
如月千早
そう請け負い、挙げてくれたリストを見て、私達はかなり怯んだ。
如月千早
今まで少しづつ練習してきた曲の中でも、演奏技術を求められる難曲や、
如月千早
よく知られた名曲、言い換えれば、誰の耳にも間違いが目立つ曲ばかりだ。
二階堂千鶴
千鶴さん曰く、『ハッタリをかますのに丁度良い曲を選んでみましたわ。』
如月千早
……と云う事らしいが……。
二階堂千鶴
「千早さん。」
如月千早
「あ、は、はい!」
二階堂千鶴
「貴方があの曲を選んだのは、何故です?」
如月千早
いつ訊かれるだろうと思っていた問いかけだが……、
如月千早
「……すみません、正直、不意に思い立ったというか……。」
二階堂千鶴
「成程、貴方の勘が、歌うべきと判断したのかも知れませんわね。」
如月千早
「私の……勘、ですか?」
二階堂千鶴
「あの曲を、というのは、実は私も考えておりました。」
如月千早
「そうなんですか?でも、それは何故?」
二階堂千鶴
「以前にも申し上げました通り、ハッタリをかますのに丁度良いですから。」
如月千早
「ハッタリ……ですか?」
二階堂千鶴
「ええ、その為には、手持ちの最大の武器を惜しんではいられません。」
如月千早
「出来るでしょうか、私に……。」
二階堂千鶴
「勿論、ですわ。」
如月千早
さらりと言ってのけるが、何故そうあっさりと信用してくれるのか。
如月千早
いずれにせよ、賽は投げられた。賭けの張り直しは叶わない。
二階堂千鶴
「それはそうと、いい加減バンド名を決めないといけませんわね。」
如月千早
「あ、それならば、私とジュリアで考えた案が有るんです。」
二階堂千鶴
「あら、お二人で?一体どんな?」
如月千早
「帰ったら教えます。望月さんも気に入ってくれてるんですよ。」
如月千早
私は歩を早めて、訝しげな千鶴さんを追い越した。
如月千早
私達は少しづつでいい。一歩づつ、前へと進んで行ければ。

(台詞数: 50)