周防桃子
さて、今日は春香さんと琴葉さんの試合の日。
周防桃子
準決勝に出る最後の人が決まる試合だから、桃子も練習をいったん止めて、劇場に戻っていた。
周防桃子
この二人の勝負も、なかなか良い試合になりそう。
周防桃子
春香さんの方が経験はあるけど、琴葉さんだってかなりの実力者だし。
周防桃子
個人的には、やっぱり『リコッタ』で一緒だった春香さんにがんばってもらいたいけど。
周防桃子
そんなことを考えながら、並んで座っていた貴音さんに、何気なく聞いてみた。
周防桃子
「貴音さんは、どっちが勝つと思う?」
周防桃子
そう。本当に、何気なく。
四条貴音
「春香です。」
周防桃子
返ってきたのは、なんの迷いもためらいもない答えだった。
周防桃子
「即答?自信があるんだね。」
四条貴音
「…いいえ、わたくしは知っていますので。」
周防桃子
…知っている?何を?
周防桃子
でも、それを聞こうとしたところで、春香さんがステージに登場してしまった。
天海春香
「こんにちは!今日は、私と琴葉ちゃんのステージを見に来てくれて、ありがとうございます!」
天海春香
「勝っても負けても、見てくれるファンのみなさんに恥ずかしくないように、全力で歌いますね!」
天海春香
「それでは、歌わせてもらいます。曲は…『乙女よ大志を抱け!!』」
周防桃子
きた!春香さんの定番ソング!
天海春香
『乙女よ大志を抱け!! 夢見て素敵になれ 乙女よ大志を抱け!!恋して綺麗になれ』
天海春香
『立ち上がれ 女諸君 ハイッ!』(ハイッ!)
周防桃子
定番だけに、ファンのコールもカンペキに合わせてきて、会場は盛り上がっている。
天海春香
『ダッシュ中にメールチェック ラッシュ中にブログチェック なかなか世の中も忙しくて大変』
周防桃子
そして、ここは…。
天海春香
『私流格言その1!』
天海春香
『急がばまっすぐ進んじゃおう』(急がばまっすぐ進んじゃおう!)
周防桃子
うん!会場が一体感であふれてるね!
天海春香
『乙女よ大志を抱け!! 遊びも学びなんだよ 立ち上がれ 女諸君 ハイッ!』(ハイッ!)
周防桃子
やっぱり、春香さんはすごいな。この盛り上げ方は勉強になる。
周防桃子
そういえば、AS組のライブでは、だいたい春香さんがソロの一番手だったと聞いたことがある。
周防桃子
こんな感じで会場を盛り上げてくれたなら、続く人もやりやすかったんじゃないかな?
周防桃子
…ん?続く人…続く?
周防桃子
そこで、桃子はハッと気付いた。
周防桃子
ちがう。この場合の「続く人」は、ステージをいっしょに盛り上げる仲間じゃない。対戦相手だ。
周防桃子
貴音さんのほうに目を向けると、こちらを見ていたのか、目が合った。
四条貴音
「…。」
周防桃子
曲の最中だから何も言わないけど、その目を見ればわかる。
周防桃子
「桃子にも、解ったようですね?」って。
天海春香
『乙女よ大志を抱け!! いっぱい幸せ掴もう ヤレバデキル 女諸君 ハイッ!』(ハイッ!)
周防桃子
…うん、わかった。貴音さんの言おうとしてたこと。
周防桃子
定番ソングで失敗はゼロ。そして、盛り上がったファンのこの空気。安定感と安心感。
周防桃子
対戦相手になる人は、それらを全部ひっくり返すだけのものを出さなくちゃいけない。
天海春香
『乙女よ大志を抱け!! テストはチャット相談会』
天海春香
『乙女よ大志を抱け!! 遊びも学びなんだよ 立ち上がれ 女諸君 ハイッ!』
周防桃子
…スキの一つも見当たらない、カンペキなステージだった。
天海春香
『言えない言葉が ずっとあったの…』
天海春香
『みんなに私 いつも…ありがとう…!』
周防桃子
歌が終わると、会場から歓声と拍手が巻き起こる。
周防桃子
それを全身で受けるのは…押しも押されぬ765プロのセンター、天海春香という強敵だった。
(台詞数: 48)