馬場このみ 29歳 プロデューサー26話
BGM
君だけの欠片
脚本家
nmcA
投稿日時
2017-09-18 00:10:37

脚本家コメント
第2章「うそつきアップルパイ」12話
【ここまでのお話】
 武道館ライブ後、仮眠をとっていたこのみは5年後の765プロに心だけタイムスリップしていた。自らの身体の変化に戸惑うものの、プロデューサーとして活動することを決意する。
 ひなたの悩み「東京の言葉を喋れることを隠していること」を解決するため、エミリーは自分のステージにひなたを呼ぶ。東京の言葉を話せることを隠すかどうかで迷うひなたに対し、エミリーはステージで語りはじめる。

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エミリー
「私が今日の舞台を区切りとして、活動を縮小するのは皆さんご存知かと思います」
馬場このみ
エミリーちゃんはマイクを両手で持って話を続ける。
エミリー
「日本をもっと知り、立派な大和撫子になるために、大学へ進学するのがその理由なのですが、
エミリー
「祖国の大学も視野にいれるか悩んでいた私の背中を押してくれたのがそのお友達でした」
馬場このみ
ひなたちゃんを見ると、開いた口を閉じるのも忘れてモニターに見入っていた。
エミリー
「『やりたいことがあるなら自分にウソついちゃいけない』」
エミリー
「『自分にウソをついたら、ファンの人もきっと悲しむよ』」
エミリー
「……お友達はとてもやさしい方です。いつも周りのことを考えています」
エミリー
「ただ、その優しさから……その友達は大きな悩みを抱えてしまいました」
馬場このみ
エミリーちゃんはギュッと目をつぶった。
エミリー
「今度は私が助けたい」
エミリー
「友達が進む一歩の手助けとなるよう、この曲を歌います。」
エミリー
「彼女が抱えてしまった悩みは、彼女でなければ抱えなかったもの。そこに気付いてほしいから」
エミリー
「……聞いてください」
エミリー
「『君だけの欠片』」
馬場このみ
会場にピアノの音が広がり、ペンライトがともり始める。
馬場このみ
「まったく、エミリーちゃんも粋なことをするわね」
木下ひなた
「ねえ、プロデューサー、私でなければって……」
馬場このみ
「そうね。まつりちゃんも言っていたけど、ウソをつくってとってもリスキーでしょ」
馬場このみ
「でも、ひなたちゃんはためらいなくウソをつくことにした。ウソをつくのは嫌いなのに」
馬場このみ
「そういう優しくて正直なひなたちゃんだからこそ悩んでしまったってことかしら」
木下ひなた
「……
木下ひなた
「……正直にって、そういうことだったんだ……」
馬場このみ
「ひなたちゃん?」
木下ひなた
「プロデューサー!」
馬場このみ
ひなたちゃんのはっきりとした声が控室に響く。
木下ひなた
「私、決めた!どうしたいか!」
馬場このみ
大きな声に驚いたが、私はひなたちゃんの目を見てこくりと頷いた。
木下ひなた
「それでね、一つお願いがあるんだけど……」
馬場このみ
「いいわ、何でも言って!」
木下ひなた
「あのね、わがままだって分かってるんだけど……」
馬場このみ
ひなたちゃんが"お願い"を話す。
馬場このみ
「……」
木下ひなた
「ダメ……かな?」
馬場このみ
「いえ、何とかするわ!お姉さんに任せなさい!!」
馬場このみ
ぽんと自分の胸を叩く私を見てひなたちゃんがふふっと笑う。
馬場このみ
「な、なによ!」
木下ひなた
「ううん、なんだか昔を思い出しちゃって。ミックスナッツの頃を」
木下ひなた
「プロデューサー、私たちのやりたいことを頑張って詰め込んでくれたなって」
馬場このみ
「そうだったわね。まぁ、昔も何も、私はその時の人間なんだけど」
木下ひなた
ひなたちゃんはしまったという顔をして、慌てて謝る。
馬場このみ
「気にしないで。それより、そろそろ移動しましょ」
馬場このみ
舞台袖に移動すると、エミリーちゃんの透き通った声が身体に響き渡ってくる。
エミリー
「何度でも強くさせる 痛みも 悩みも 君だけの欠片」
馬場このみ
ひなたちゃんはまっすぐエミリーちゃんを見つめている。
木下ひなた
その背中は、私のよく知っている面影を残しつつも、大きくなっている。
エミリー
「期待 憧れ 希望がきらめく 私たちの未来へ」
木下ひなた
曲が終わる。くるりとこちらを向いたひなたちゃんと目が合う。
木下ひなた
「あたし、がんばっから!いってくるよぉ!」
馬場このみ
私は大きくうなずいて、ステージへと飛び出すひなたちゃんを見送った。

(台詞数: 50)