エミリー
『拝啓 お父様お母様へ。こちらはようやく季節にふさわしい気候になって参りました。
エミリー
元気でお過ごしでしょうか?本日は私の仲間紹介したく筆をとりました。
エミリー
二階堂千鶴さま、という方です。ご実家は大変裕福な令嬢なのだそうですよ?
エミリー
ですが、故郷の令嬢のように偉ぶる事などなく、私のような若輩にも気軽に接して下さいます。
エミリー
私達がこの事務所に所属したての頃、このような事がありました。
二階堂千鶴
(高槻さん、どうしてお掃除なんか。ここはアイドルにこんな事させますの…自分から進んで?)
二階堂千鶴
(皆が使うからキレイにしておきたくて…まあ。それは関心ですわ、ご立派ですわよ。)
エミリー
その翌日から千鶴さまは、やよいさんのお手伝いをするようになりました。
エミリー
令嬢がご自分でお掃除などなさるのですか?と、尋ねた所。
二階堂千鶴
(当然ですわ。繁盛するお店とは主自らが掃除しているものですわよ。)
エミリー
との事でした。やはり、日本の令嬢は故郷とは違います…あ、私もちゃんとお手伝いしてますよ?
エミリー
それからまた、こんな事も。
二階堂千鶴
(亜美、真美、エミリー。レッスンご苦労様、差し入れですわ。シェフご自慢の海苔巻きですわよ)
エミリー
この時、亜美さん真美さん達が、その海苔巻きを振り回して遊び始めたのです。ですが。
エミリー
一旦席を外していた千鶴さまは、その様子をご覧になると。
二階堂千鶴
(食べ物で遊ぶとは何事です、今すぐ止めなさい!)
エミリー
あれほどまでに怒った千鶴さまを見たのは初めての事でした。二人もすっかり落ち込んでしまって。
エミリー
当然の事とはいえ、あのようにはっきりと叱れる姿。私にはとても頼もしく見えたのも事実です。
エミリー
…だから、でしょうか。私は一度、とてもはしたない振舞いをしてしまったのです。
エミリー
それはとあるご友人の家に千鶴さまと二人、ご招待を受けた時の事。
エミリー
楽しい一時でした、ご両親の方々も私達を大いにもてなして下さって。
エミリー
ですが。友人がご両親に甘えてはしゃいでいるその姿を見た時。
エミリー
…恥ずかしい事です。ほんの一瞬だけ、私は寂しい気持で胸が潰れそうになりました。
エミリー
まだまだです、立派な大和撫子となる大志を抱いている私が、あのような気持に捕らわれるなど。
エミリー
そして、寮への帰り道。千鶴さまは私にこう言われました。
二階堂千鶴
(遅くなりましたわ、今から車を呼ぶのも億劫ですわね。エミリー、ここに泊めていただけます?)
エミリー
千鶴さまはあの時、私が一瞬だけ見せた表情に気付いておられたのだと思います。
エミリー
その夜は楽しいものでした。千鶴さまと故郷やお仕事の話をしたり、二人で湯浴みをしたり。
エミリー
それから、寝床に就く時。千鶴さまは私をじっと見て、こう言ってくださったのです。
二階堂千鶴
(エミリー?寂しい気持を抑えてはいけませんわ。抑えつければいつか、溢れてしまう。)
二階堂千鶴
(少しでもいい。吐き出して、溜め込まないようになさい。大丈夫、わたくしはいつでも…)
エミリー
そこから何を言われたかはよく覚えておりません。気が付くと私はわんわん泣いておりました。
エミリー
その間千鶴さまは何も言わず、抱きしめてくださいました。その暖かさは今でも覚えています。
エミリー
日本に来るまで私は大和撫子とはかくあるべし、と画一的なものとして考えておりました。
エミリー
その点から見れば、千鶴さまは些か異なります。子供っぽかったり高笑いをされたり。
エミリー
ですが。いつでも皆の事を気にかけてくださって。そして、私達の事をよく見てくれています。
エミリー
そう…まるで、お母様のように。なんて言うのは失礼でしょうか?千鶴さまはまだお若いのに。
エミリー
辛い時もあります。ですが、皆様や千鶴さまのおかげで私は頑張っていけそうです、ご心配なく。
エミリー
次にまた会える日を楽しみにしております。あらあらかしこ あなた達の娘 エミリー。』
エミリー
『追伸 先日の千鶴さまの誕生日祝宴を収めた円盤を同封致します。私も出演しておりますよ?』
二階堂千鶴
…ぶえっくしょん!あらプロデューサー、失礼しましたわ、何かしら急に。
二階堂千鶴
誰かわたくしの噂をなさってますのね。セレブは辛いですわ、おーっほっほ…ゲホゴホッ。
(台詞数: 42)