エミリー
「あのっ…ここってもしかして…!?」
黒井社長
箱崎父「ああ、君たちが明日いく海水浴場だよ」
エミリー
「お父さんと星梨花、とっても楽しそうです!」
黒井社長
箱崎父「ああ、そうだね…」
エミリー
そう応えるお父さんの瞳は虚ろで…
エミリー
「とっても悲しそうです…」
黒井社長
箱崎父「ん?いまなんて?」
エミリー
「私の勘違いだったらごめんなさい…」
エミリー
「いまのお父さん…とっても哀愁漂っています…」
エミリー
「その…これは幸せな思い出ではないのでしょうか?」
黒井社長
箱崎父「ああ、幸せだったさ、本当に幸せすぎるほどの時間で…」
黒井社長
箱崎父「それが崩れるのも本当に一瞬だった」
黒井社長
箱崎父「まるで夢のような…いや、幻と言ったほうが正しいだろう」
エミリー
「ごめんなさい、意味がわかりません」
黒井社長
箱崎父「あの子には、この写真の記憶がないんだ」
黒井社長
箱崎父「私とあの海にいった、あの日の記憶がないんだ」
黒井社長
箱崎父「それがあの子にとっての事実であり、真実であり続けるだろう」
エミリー
「そんなっ…どうしてですか?」
黒井社長
箱崎父「それは私が父親失格だからだ」
エミリー
「お父さん…」
黒井社長
箱崎父「私もその日までは完璧な、理想的な父でいたはずなんだ」
黒井社長
箱崎父「だが、一瞬の気のゆるみが、私の甘さが、あの子を傷つけてしまった…」
エミリー
「一体なにがあったのでしょうか?」
黒井社長
箱崎父「ボトルメールだよ」
エミリー
「瓶詰めの手紙?」
黒井社長
箱崎父「ああ、あの日は娘がどうしてもボトルメールを流したいって言ってね」
黒井社長
箱崎父「一緒に流したんだ。けれど…中々上手くいかなくてね…」
黒井社長
箱崎父「だけどあの子はどうしてもどこかへ届けたかったみたいだ」
黒井社長
箱崎父「私が妻の言葉に気を取られてるその一瞬をついて、一人で行ってしまったんだよ」
黒井社長
箱崎父「そのボトルメールを外海に解放しに…」
黒井社長
箱崎父「けれど、所詮は小さな子供だ、波には太刀打ちも出来ずに、呑まれて溺れてしまった」
黒井社長
箱崎父「なんとか…助かりはしたんだがね…」
黒井社長
箱崎父「その時のショックのせいか…一時的な記憶喪失がみられてね」
黒井社長
箱崎父「その時のトラウマのせいか、私は娘を厳しく監視するようになってしまった…」
黒井社長
箱崎父「私は…娘の自由を奪ってしまった…」
黒井社長
箱崎父「あの瓶詰の手紙のように…窮屈な場所に閉じ込めてしまった…」
黒井社長
箱崎父「思えばずっと、父親失格だったのかもしれないな…」
黒井社長
箱崎父「そう、全ては私のせいなんだ…」
エミリー
「そんなこと…ないです」
エミリー
「たしかに色々あったかもしれないですけど…」
エミリー
「でも、それはお父さんが不器用なだけでっ!」
エミリー
「本当は誰よりも優しい私達の大切なお父さんです」
エミリー
「だから、そんなに自分を責めないでください」
エミリー
「だって、星梨花はいまとっても幸せなはずです」
エミリー
「それに、私もとっても幸せです」
黒井社長
箱崎父「エミリー…」
黒井社長
箱崎父「ありがとう」
エミリー
「そんな、私は何も…あっ、そういえば、その瓶詰めの手紙はどうなったのでしょうか?」
黒井社長
箱崎父「届いたよ」
黒井社長
箱崎父「その手紙は…エミリー、君が大切に持っていてくれているじゃないか」
(台詞数: 50)