戯詩
BGM
little trip around the world
脚本家
mayoi
投稿日時
2016-05-14 23:16:47

脚本家コメント
きさらさんの廃墟シリーズに便乗。
世界観だけお借りした、別のお話です。
本家はこちら。
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/800000000000050614/seq/257
茜ちゃん隕石の衝突とかそんな感じのふわっとした理由で滅んでます。

コメントを残す
エミリー
「あら」
エミリー
目の前で信号が変わってしまいました。
エミリー
赤信号に交渉の余地はありません。駄目なものは駄目、です。
エミリー
……でも。
エミリー
「ふふ、信号無視をしてしまいました。悪い子ですね」
エミリー
世界でひとりきりになってから、結構な時間が経ちました。
エミリー
人の目を気にしなくて済むのは爽快です。
エミリー
立ち入り禁止のお寺に入ったり、歯磨きしてからお菓子を食べたり。
エミリー
それはもう、悪行の限りを尽くして参りました。
エミリー
なのにどなたにも叱っていただけないのが、ちょっとだけ寂しくて。
エミリー
仕方なく、程々にしております。
エミリー
そんな私の近頃の流行は、犬小屋巡り。
エミリー
「あら、素敵なお家ですね」
エミリー
「今日はこちらに不法侵入いたしましょう」
エミリー
ここで暮らしていた飼い犬さんがどんな風景を見ていたのか。
エミリー
どんな風に愛されていたか、垣間見ることができるからです。
エミリー
ちなみに今日は『ポチ四郎』さんのお宅にお邪魔します。
エミリー
「ん、しょ」
エミリー
「ほわぁ……」
エミリー
不思議なのは、空がとても大きく見えることです。
エミリー
視点が低いのでどうしても見上げる形になり、空ばかりが広がるのです。
エミリー
何ひとつ欠けた所のない純粋な青。
エミリー
その前で私はとてもちっぽけな存在です。思い知らされるのです。
エミリー
毎日これでは気が滅入ってしまいそうです。
エミリー
たまには何かで遮っていただけたら幸せだと思います。
エミリー
それが愛するご主人様のお顔であったなら、とても素敵なことです。
エミリー
「Wow!」
エミリー
何かがぐにょりとしました。
エミリー
大丈夫、虫さんはいないはず。落ち着いて確認します。
エミリー
「これは……布?」
エミリー
とても使い古された、丈夫な……。
エミリー
あ、分かりました。ポチ四郎さんのおもちゃです。
エミリー
こんなになるまで遊んで、よほど嬉しかったのでしょうか。
エミリー
だってそうですよね。
エミリー
片側だけボロボロということは、もう片側にはご主人様がいたはずですもの。
エミリー
「……さて」
エミリー
日も傾いてきました。
エミリー
……そろそろ帰りましょうか。
エミリー
今日は楽しかったです、ポチ四郎さん。
エミリー
できれば一緒に遊びたかったです。でも仕方ないですよね。
エミリー
生き残るって、そういうことです。

(台詞数: 41)