エミリー
菜の花畠に、入り日薄れ。見渡す山の端、霞深し……ですね、仕掛け人さま。
エミリー
……お昼間は暑ささえ覚えましたけど、日が落ちると肌寒さがありますね。
エミリー
あ、いえ。仕掛け人さまに要らぬご心配をお掛けするつもりではなかったのですが……
エミリー
……本日の撮影では、眼が悪いわけでもないのに眼鏡を掛けるようにとのご指示で戸惑いましたが、
エミリー
聞けば、江戸の頃から菜種の名産地でのお仕事とのことで、嬉しさもひとしおでした。
エミリー
……江戸時代の大和撫子の皆様も、この花の景色を愛でていらっしゃったのでしょうか?
エミリー
……菜花のお浸しも食べていたかも、ですか?……仕掛け人さま、いささか無粋ですよ。
エミリー
……
エミリー
『花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき』という言葉が、日本には有るそうですね。
エミリー
今は縁(えにし)がありまして、『大和撫子』に邁進できている私ですが……
エミリー
……やがて散ってしまう菜の花のように、いつか『大和撫子』では居られなくなるのでしょうか?
エミリー
……
エミリー
……はい。私の故郷でも菜種から油を絞り、それを用いる慣わしですが……
エミリー
……花が終わっても、菜の花は灯火となって人々を照らす。確かにそうですね。
エミリー
……いつか、ゴヒイキ様の前から姿を消すとしても、心に「灯火」を灯せるようになろう、ですか。
エミリー
……そうですね。恥ずかしながら私、いささか思い違いをしていたのかもしれません。
エミリー
『大和撫子』とは、ただ一時咲き誇るためのものではなく……
エミリー
永く愛され、心の支えや喜びになれることを目指し、精進していくものなのでしょうね。
エミリー
……
エミリー
……それでは仕掛け人さま。この地に来たのですから、ぜひ天麩羅蕎麦を頂いていきましょう!
エミリー
僭越ながら私、旅の手引書で調べまして。この菜種の油で揚げた天麩羅が、名物だそうです。
エミリー
……食べる話は無粋じゃなかったか、ですか?ふふっ、これも日本を知るために大事なことですよ。
(台詞数: 22)