エミリー
ラジオ『現在台風19号は、関東圏内に接近』
エミリー
『明日の朝には、東京都心を通過し、海岸線付近の……』
北沢志保
亭主「ふぅ、先週に続いてまた台風接近か…」
北沢志保
亭主「しかし、この雨の中よく来なすった…コーヒーはわしの奢りだ」
北沢志保
ありがとう……ございます
エミリー
よろしいのですか?
北沢志保
「ああ、貰ってくれ…その方がコーヒー豆も喜ぶってもんだ…」
エミリー
ふふ、店主さまのお気持ちに感謝です
北沢志保
「…苦かったらそこに、砂糖とクリープがあるから使ってくれ」
北沢志保
「お嬢さん達…観光かい?この辺じゃ見ない顔だねぇ」
北沢志保
いえ、仕事です…。アイドルの…
エミリー
内密のご披露があります。
北沢志保
「内密…?ああ、シークレットライブがあるって事か…」
北沢志保
(成る程な、地下アイドルってやつか…?)
北沢志保
「そうか…。たまにくるんだよ。お嬢さん達と同じ歳くらいのアーティストにな」
北沢志保
「将来の夢とか、未来とかの希望を聞いたりもするが」
北沢志保
「それと同じくらいに、挫折や現実の厳しさも耳にしたよ」
北沢志保
……やりきれない話ですね。
北沢志保
「ああ、そうかもしれんがね……それでもな、社会と向き合うにしても」
北沢志保
「何かしらの道標が必要なんじゃよ。例えば選手やアスリートのような…」
エミリー
……。
北沢志保
「今、アイドルが流行っているのは何処かで信じていたいんじゃないか…」
北沢志保
「こんな世の中でも、願いや背中を後押しして欲しい存在がな…」
エミリー
以心伝心…想いや望みを託す……素敵な事ですよね
北沢志保
その人達がどんな気持ちで見ているかはわかりませんが
北沢志保
私が、見てきたアイドルという歌姫は状況や環境に屈しない人でした
北沢志保
それなら、やれる事は全てだしきっていきたいです。
北沢志保
私は、雨の中来てくれたファンの人達を失望させたくありませんから…
北沢志保
「成る程……強いものなのだなアイドルって言う生き物は…」
北沢志保
「確か…こんな嵐の中にライブをしたアイドル達がいたな…」
北沢志保
「確か…ファンの間じゃ『タイフーンライブ』といわれた話じゃ」
北沢志保
「765プロは聞いたことあるだろ?まだ竜宮小町が主体だった頃のライブだったな」
北沢志保
「台風でお陰でそのグループがライブに遅れる間でも」
北沢志保
「残ったメンバーで会場を大いに沸かせたそうじゃないか…」
北沢志保
「わしは信じておるよ。アイドルって奴はそういう生き物だとな」
エミリー
ふふ…。そのお話が聞けただけでもこちらに足を運んだ甲斐がありました。
北沢志保
マスターさん、コーヒーごちそうさまでした
北沢志保
「ああ、そろそろいくのかい…?今度来る機会が、あれば晴れるといいな」
エミリー
明日の午後くらいには、台風は過ぎ去りますから、きっと晴れ日和ですね
エミリー
申し遅れましたね。私はエミリー・スチュアートといいます。
エミリー
所属の事務所は……。
北沢志保
「…………」
北沢志保
「驚いたものだ…まさかあの娘たちは765のアイドルだったとはな…」
北沢志保
「まさか、この付近でライブをするとは思わんかったよ」
北沢志保
━━東京都世田谷区某所
北沢志保
クレシェンドブルー、エターナルハーモニーのシークレットライブが開催された。
エミリー
仕掛人さまやファンのみなさまの距離は近づいた公演でした。
北沢志保
━━翌日の午後
北沢志保
━━その日の空は雲一つない
北沢志保
━━群青の空が広まっていた
(台詞数: 50)