天海春香
静寂を守る凪いだ海に独り。
天海春香
ポツリと佇んで星を眺める。
天海春香
その瞳に映るは夜空に散りばめられた何全何百の星達か…
天海春香
若しくは遠くへ旅立ってしまった友との日々の欠片か…
天海春香
彼女の瞳は凪いだ海とは対照的に揺らいでいる。
天海春香
やがて、その瞳からは一筋の涙が零れ落ちる。
天海春香
その雫が水面に触れたとき、波紋は海面に広がっていく。
天海春香
まるで水平線の彼方にまで届くかのように…
天海春香
決して彼女が手を伸ばすだけでは届かないところまで…
天海春香
彼女の想いを汲んで、乗せていく。
天海春香
夜の水面に映るその光景は余りに現実とは乖離していて…
天海春香
泡沫の一時であり、見事なまでに幻想的だった。
天海春香
夢でもいいから、友と再び会いたい。
天海春香
そう切なくも淡い願いを願い、胸元に当てた手のひらをグッと押し付ける。
天海春香
視線を下に落とすと、見覚えのある草履が視界に入ってきた。
天海春香
草履…
天海春香
あの日、大切な人と一緒に波に攫われたものだと思っていたのに…。
天海春香
持ち主を失ったそれは、決して穢れる事もなく…
天海春香
月明かりの下で儚くも健気に、その持ち主の帰りを待っているかのようだった。
天海春香
同時に、それが答なのだと悟るしかなかった。
天海春香
彼女はその場で屈むと、その忘れ形見を優しく拾い上げる。
天海春香
あっちの世界に迷い込んでしまった貴方がいつでもまた帰ってこれるように…
天海春香
もう一度この草履を履いて、またこの渚を駆け抜けられるように…
天海春香
彼女はずっと祈り続けるだろう。
天海春香
友の帰るべき道を紅の灯で燈し続けるために…
天海春香
「約束」
(台詞数: 26)