ほたるびより
BGM
ココロがかえる場所
脚本家
不明
投稿日時
2017-05-16 21:23:21

脚本家コメント
アイドル一年目。初めての合宿の、
最後の夜のお話です。
なんだかご無沙汰になってしまいましたね。

コメントを残す
矢吹可奈
「雨は止んだけど……まだ曇ってるなぁ。星……見えないや」
北沢志保
"志保ちゃんに見せたいものがあるんだ"と、連れ出されたのは、初めての合宿の、最後の夜。
矢吹可奈
「あ、でも…違うよ?見せたいものってのは、星空の事じゃないんだ。こっち…ついて来て?」
北沢志保
月のない空の下、隣から聴こえる調子っ外れな歌をBGMに、緩い坂道を下っていくと…
北沢志保
虫の声に混じって聞こえて来たのは……小川のせせらぎ。ここが目的の場所なのだろうか…。
矢吹可奈
「あ、あれ…?いない……。おかしいなぁ…?」
矢吹可奈
「せっかく合宿所の女将さんに、蛍がいっぱいいる場所聞いて来たのに……」
北沢志保
蛍……。そう言えば…そんな時期か。
矢吹可奈
「はぁ……。ごめんね?こんな所まで連れ出しておいて……」
北沢志保
「……どうして?」
矢吹可奈
「ん?どうして?うーん…やっぱり……蛍さんも雨は嫌いなのかなぁ?」
北沢志保
「いや、蛍がいない理由じゃなくて…どうしてそれを私に見せようと思ったのか…よ」
矢吹可奈
「……えっと…ね……?なんだか志保ちゃん、元気なさそうだったから…」
北沢志保
……そう言う事…か。気を使われたくなかったから、隠してたつもりだったのに。
北沢志保
「だからと言って…あなたには関係ないでしょう?どうしてこんな…」
矢吹可奈
「か、関係あるよ、だって…友達だもん」
北沢志保
「え?」
矢吹可奈
「え?」
北沢志保
「…友達なの?」
矢吹可奈
「違うのぉ?!」
北沢志保
「……確かによく話しかけてくるな、とは思っていたけど…」
矢吹可奈
「そっか……。あは…あはは…」
北沢志保
なんだか落ち込んでしまったので…少し申し訳なくなってしまった。
矢吹可奈
「いいんだ、別に……。片想いだって立派な恋だもん」
北沢志保
よくわからない理論だけど、無理やり納得したみたいだ。改めてこちらに向き直る。
矢吹可奈
「ねえ……志保ちゃん?」
矢吹可奈
「星空も…蛍もダメだったけど……。目を閉じて…想像してみて?」
矢吹可奈
「大きな大きな…コンサート会場。そのステージの上から、見える景色を」
北沢志保
思い浮かべてみる、その会場を…。輝くスポットライト。一面に広がる、色とりどりのサイリウム。
北沢志保
そして……来てくれたみんなの、楽しそうな笑顔。
北沢志保
余韻を残したまま目を開けると、矢吹さんが真っ直ぐな瞳でこちらを見つめていた。
矢吹可奈
「ね、志保ちゃん?星空よりも、蛍よりも、キラキラなその景色。いつか2人で見にいこうよ♪」
北沢志保
「矢吹…さん……」
矢吹可奈
「くぅーっ、恥ずかしいー!?よーし!1番、矢吹可奈!歌いまーす!せーの!Dreaming〜
北沢志保
「え?な、な、何?なんでよ?!」
北沢志保
……相変わらず調子っ外れな歌だけど…、どうしてだろう?今日は不思議と…心に沁みた。
北沢志保
だけど…そんな気持ちになってしまった事が、少し恥ずかしくて…。顔も赤かったかもしれない。
北沢志保
それを悟られるのが嫌で、隠す様に体を横に背けた。
北沢志保
「はぁ…………え?ね、ねえ…、あっち見て?」
矢吹可奈
「え?………わぁぁ…」
北沢志保
そこに広がっていたのは、光の海…ではなく…いつの間にかの蛍の群れ。
北沢志保
奇しくもそれは……さっき思い浮かべたばかりの光景に…そっくりだった。
矢吹可奈
「す、す、すごいすごい!ねえ、私の歌を聴きに来てくれたのかな!?」
北沢志保
「そんな事ある訳……」
北沢志保
いや……。そうなのかもしれない。ううん……違う。きっと…
北沢志保
そうであって…ほしいんだ。
北沢志保
多分、私は……。多分、少しだけ…
北沢志保
「……………可奈」
矢吹可奈
「…え?い、い、い、今!下の名前で呼んだっ?!」
北沢志保
信じてみたくなってしまったんだと…思う。自分以外の…誰かの事を。

(台詞数: 50)