北沢志保
「全く……なんで私が……」
北沢志保
麗花さんから迎えにきてほしいと連絡を受け指定された場所へ向かう。
北沢志保
たまたま仕事が押して事務所を出るのが遅くなっていたからいいものの
北沢志保
高校生にもなっていない少女を夜に呼び出すのはどうかと思う。
北沢志保
思いつつも言うことを聞いてしまう自分を甘いなと少し思いつつ建物のドアを開ける。
北沢志保
バー……なのだろうか、未成年の私は少し気まずいが目当ての人を探す。
北上麗花
…………。
北沢志保
…………。
北沢志保
「麗花さん、迎えにきましたよ」
北沢志保
平静を装い声をかける。
北沢志保
正直言うと、少し見惚れてしまった。普段は朗らかな笑みを浮かべているが、
北沢志保
整った表情は憂いを帯びいつもと違う雰囲気を醸し出していた。
北沢志保
変装用のメガネといつもと違う髪型も相まって別人のような魅力で、
北沢志保
しかしそれでも彼女は北上麗花なのだと納得させる何かを彼女は持っていた。
北上麗花
「あ、志保ちゃんごめんね〜」
北沢志保
私が声をかけた瞬間、彼女はその表情を和らげいつもと同じ朗らかな笑みを浮かべた。
北沢志保
しかし私の脳裏には先ほどのどこか物悲しい表情がこびりつき、忘れることができなかった。
北上麗花
「志保ちゃん?おーい、どしたの?」
北沢志保
「あ、すみません、ちょっとボーッとしちゃって……」
北上麗花
「ああ、あるある、私もよくボーッとしちゃうんだ〜。ポカポカ〜ってしてるとすぐなっちゃう!」
北沢志保
先ほどまでの、落ち着いた魅力はなりを潜めいつもの朗らかな麗花さんだ。
北沢志保
つかみどころがなく、それでいてこちらとの距離を一気に詰めてくる無遠慮さを持つ、
北沢志保
いつもの彼女だ。
北沢志保
「それで、こんな時間に中学生をこんな場所に呼び出して何の用ですか」
北沢志保
平静を装い、いつもの私を意識して演じる。
北上麗花
「えっと〜志保ちゃんに会いたいなってのは、ダメ?」
北沢志保
「…………っ!ダメです」
北沢志保
さっきの顔を見てからそんなことを言われると……冷静じゃいられなくなりそうで……
北沢志保
ダメ……。
(台詞数: 29)