北沢志保
可奈に手料理を振る舞うことになった。
北沢志保
きっかけなんて些細なもので、単に可奈が
矢吹可奈
「志保ちゃんの作った料理が食べたい!」
北沢志保
と言ったから
北沢志保
家族以外のために料理を作るなんて滅多にない。だから、ちょっと躊躇って
北沢志保
「じゃ、カレーでも」
北沢志保
と言ってしまった。
北沢志保
なんて無難!!なんて面白味のない!!なんて無個性なチョイス!!
北沢志保
でも作るからには、あの子をあっと言わせるような、最高のカレーを作ってみせるわ!
北沢志保
レシピブログに載ってるような、そんなカレーじゃ誰が作っても一緒
北沢志保
図書館へ行き、インドを旅した料理研究家のエッセイを借りる。
北沢志保
「百々山巡太郎のカリーな食卓~南インド編~」
北沢志保
ここに登場するカレーを完全再現するわ!
北沢志保
作るのは、焼きナスとジャガイモのタマリンドカレー
北沢志保
ダイエットにも効果があり、ヘルスコンシャス志向の強いインド中流階級で食される……と。
北沢志保
まずはナスを焼く。その後水につけ皮をむき、粗みじん切に。
北沢志保
粗みじん…3~4mm角のことね。ちなみに2~3mm角の普通のみじん切りとなったものは排除。
北沢志保
ジャガイモを茹で、皮をむき、この日のために新調したポテトマッシャーでつぶす
北沢志保
タマネギは5mmでスライス。当然0.5mm以上の違いが出たものは排除。
北沢志保
トマトも粗みじん……。これはひと苦労。
北沢志保
シシトウを小口切り……え!?厚さが書いてない!?
北沢志保
仕方がない。こうなったら小口……可奈の口をイメージして
北沢志保
……ツヤがあって、弾力もありそうで、可愛くて小さな可奈の唇…………
北沢志保
よし、完璧ね!
北沢志保
次にタマリンドをお風呂のお湯くらいの温度につける
北沢志保
お風呂の温度の全国平均は41.0℃だから……よし、これでOK!
北沢志保
10分放置した後、しっかり濾して、そこへナスとジャガイモを加える!
北沢志保
コリアンダーシード、クミンシード、メティシード、鷹の爪、生米を分量通り加え空炒り
北沢志保
スパイスミルでよくすり潰し、サンバルパウダーの完成。
北沢志保
鍋にウラドダル、チャナダル、鷹の爪、ヒング、マスタードシードを入れ中火で加熱
北沢志保
中火とは、鍋の底にちょうど火が当たる火加減のこと。……ということは、ここね!
北沢志保
タマネギのスライスを加え、しんなりするまで炒める
北沢志保
【しんなり】《副[と]・ス自》1.しなやかなさま。2.繊維が張りを失って柔らかいさま。
北沢志保
ショウガのみじん切り、トマト、シシトウ、カレーリーフを加え、3分炒める。
北沢志保
弱火にしてターメリック、カイエンペパー、塩を加え1分炒める
北沢志保
弱火とは、火の高さが鍋底と火元の真ん中あたりにくること。……よし!ここが真ん中!!
北沢志保
さらに1分後、タマリンド水溶き、ナスとジャガイモを加え中火に戻し沸騰させる。
北沢志保
沸騰後、弱火に戻しサンバルパウダーを加え10分煮込む。……1秒たりとも狂いなし!
北沢志保
…………で、出来たわ。
北沢志保
「…………はい、この前言っていたカレー。持ってきたわよ。」
矢吹可奈
「すごーい!志保ちゃんちのカレーってなんか本格的だね!」
矢吹可奈
「志保ちゃんの~♪かれ~な手づくり、すてきなカレ~♪いただきま~す♪」
北沢志保
「ど、どうかしら……?」
矢吹可奈
「………………うん」
矢吹可奈
「すっごく美味しい!!さすが志保ちゃん!!」
北沢志保
その時、気が付いたの。なんでこんなにムキになって料理してたんだろって。
北沢志保
……ああ私、この笑顔が見たかっただけなんだって。……可奈には絶対言わないけど。
矢吹可奈
「あのね!あのね!すごっく美味しかった!!ありがとう志保ちゃん!!!」
矢吹可奈
「そうだ!今度はお礼に、私が志保ちゃんのために作ってあげるね!」
北沢志保
「…………え?」(後編に続く)
(台詞数: 50)