雪の粒
BGM
待ちぼうけのLacrima
脚本家
親衛隊
投稿日時
2017-01-17 22:45:41

脚本家コメント
拝啓、悲壮の雪へ。
続きます。続かせます。

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北沢志保
東の山際が白む頃。
北沢志保
窓から冷たい風が吹き抜ける。
北沢志保
誰宛てかも分からない贈り物を置いて。
北沢志保
挨拶もせず、風は颯爽と去っていく。
北沢志保
もう、誰もいない部屋なのに。
北沢志保
────
北沢志保
昨夜は窓を閉め忘れたらしい。
北沢志保
窓辺が水浸しになっている。
北沢志保
薄白い光が雲間から洩れる朝。
北沢志保
外は一面の銀世界。
北沢志保
雪、か。
北沢志保
何年ぶりだろう。
北沢志保
確か最後は……。
北沢志保
……やめよう。
北沢志保
冬の寒さは胸が痛くなる。
北沢志保
特に、こんな雪の日は。
北沢志保
やけに車の排気音が耳に付く。
北沢志保
テレビを点ける。
北沢志保
バラエティがいい。
北沢志保
掻き消してくれる音がいい。
北沢志保
しばらく、ぼうっとして。
北沢志保
ぼうっとし終えたなら。
北沢志保
贈り物の残滓を拭き取る。
北沢志保
跡形もなく。
北沢志保
そんな休日。
北沢志保
そんな日常。
北沢志保
そんな……繰り返し。
北沢志保
────
北沢志保
西の山際の光が薄らぐ頃。
北沢志保
閉め忘れた窓から、冷たい風が吹き抜ける。
北沢志保
雪の粒を乗せて。またも挨拶なしに。
北沢志保
「泣かないで」と。
北沢志保
いや、そんなに優しくなかったか。
北沢志保
精々「泣くな」とか。
北沢志保
「めそめそするな」か。
北沢志保
……分かってるわよ。
北沢志保
冷たいのよ、ばか……。
北沢志保
独り、毒づいて。
北沢志保
頬に付いた雪の粒と一緒に拭う。

(台詞数: 39)