不緇
BGM
絵本
脚本家
mayoi
投稿日時
2016-06-07 21:41:47

脚本家コメント
穴があいたから、外側の相手に気付いた。
そんなことをぼんやりと思った。
きさらさんに前編を上げていただき、
後編を僕が書くプチ企画。
前編『白乎』
http://imas.greeーapps.net/app/index.php/short_story/info/uid/800000000000050614/seq/273

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北沢志保
絵本から学んだことがあるとすれば、物事には多義的な解釈が許されるという点だろう。
北沢志保
100万回の転生の末、猫は初めて愛することを知った。
北沢志保
初めてひとりぼっちになり、100万回泣いた。
北沢志保
そして二度と生きることはなかった。
北沢志保
私はそれをハッピーエンドだと捉えた。
北沢志保
だけど悲恋ものと解釈してもいい。ざまぁみろと感じたっていい。
北沢志保
昔、私に読み聞かせた、あの人が教えてくれたことだった。
北沢志保
それだけ、あの人が感受性に欠けていたということでもある。
北沢志保
穴があいてしまったのだと当時は思った。
北沢志保
私という存在はそこから抜け落ちてしまったのだと。
北沢志保
だけど厳密には違ったのかもしれない。
北沢志保
私でしかなかったものが殻を破り、青空に溶けていく。
北沢志保
同時に世界が殻の中を満たし、私は溺れそうになる。
北沢志保
中と外とで異なるルールに戸惑い、私は私の定義を見失った。
北沢志保
その時、羽ばたいていった私と、置いていかれた私とで。
北沢志保
決定的に違ってしまったのだ。
北沢志保
だとすれば、こういう解釈も可能なのだと今では思う。
北沢志保
都合の良い解釈に身を委ねるのも、決して悪いことではない。
北沢志保
つまりこうだ。
北沢志保
あの頃の私は、きっとどこかで生きている。
北沢志保
………………。
北沢志保
私は言葉を切った。
北沢志保
相手はどこか遠くを見ていた。
北沢志保
話を聞いているのかと不安になったのは一瞬だけ。
北沢志保
視線の先に誰かがいる気がしたから。
北沢志保
確かな予感を懐かせる、そんな瞳をしていたから。
北沢志保
私はまたとりとめもない言葉を紡ぎだす。
北沢志保
知っておいてほしかった。
北沢志保
もう忘れてしまったことばかりだけれど、支離滅裂だけれど、それでも話した。
北沢志保
せめて相手の中で、羽ばたいた私が生き続けることを願った。
北沢志保
見返りは、まあ、考えておこう。
北沢志保
穴があいたのは悲しむべきことだと思っていた。
北沢志保
だってそうだと知っていたから。
北沢志保
時間をかけて癒やしていくものだと、聞いていたから。
北沢志保
間違った答えを知ってしまうこともある。
北沢志保
これは、そういうお話。

(台詞数: 36)