北沢志保
これでやっと最上階、どうやらこの建物には最初からエレベータが無いらしい。
北沢志保
勿論あったとしても今は使えなくなっているだろうが、ここまで人の足で登るのは結構頭が悪い。
北沢志保
階段の先には、妄りに外に屋上に出られないように扉が、あった形跡はあるが、もうそこには何も
北沢志保
あ、扉踏んでた。まあ、誰もこんな所まで登ってこないでしょうし同じ事ね。
北沢志保
こんな死骸みたいな所に来たのは、まあただの寄り道である。所謂一人旅の途中なんだけど。
北沢志保
この近くに来る事があったら、是非に。と、この屋上を勧められた。
北沢志保
しかし誰にこの場所の事を聞いても、
北沢志保
「あの街は呪われている。人の立ち寄る所じゃない」
北沢志保
「あそこで死んだ魂があの建物に集まっている」
北沢志保
「特に屋上は行ったら絶対死ぬくらいのスポット!何人も飛び降りたらしい!」
北沢志保
流石にそこまで言われると興味が出るというもの。勿論心霊の類は信じていないが、
北沢志保
念の為、古い建物なので念の為明るいうちに来て夕方までにこの街から出るつもりだ。
北沢志保
この街であったことは、教科書にも載っているぐらい誰でも知っている。
北沢志保
実際にその時代生きていた人達からすれば、やはり考えたくない事なのだろう。
北沢志保
しかし、それは私の生まれる前の事。正直なんの感想も持っていなかった。気楽に探検しよう。
北沢志保
結局、この街の住人は全員助からなかったらしい。まあそれはそうだろう。
北沢志保
の、割りに。白骨とかと巡り会わなかったのは運が良いのだろうか。あ、片付けられてるかもね。
北沢志保
いや、白骨などただの物質であり、なんの感情を抱く物でもない。
北沢志保
日本語が少々おかしいが、これは恐怖からでない。この時代ではこれが普通である。である。
北沢志保
ただ建物の中は流石に暗かったのと、隙間風によって発される音が少し不気味であった。
北沢志保
あ、この不気味であったって言うのも客観的な意味というか、楽しいか不気味かの相対的な一つの指
北沢志保
……要するに。私が恐れを抱いている訳では無いということ。それだけ理解してくれれば良い。
北沢志保
さて、屋上に出てやっとライトを消せた私が最初に思ったことは。
北沢志保
寒い。
北沢志保
と言うか、下もそうだったが上はさらに風が強い。この街の風は本当におかしい。
北沢志保
屋上には柵が無く、この風の強さも相まって確かに危険スポットだった。
北沢志保
え、危ないってこう言う意味?少し安心、もとい拍子抜けしてしまった。
北沢志保
落ちないように注意しながら端まで歩いていくと、そこでは街一面を見渡すことが出来た。
北沢志保
……
北沢志保
……穴だらけだ。もし自分の故郷がこうなったらと思うとぞっとする。
北沢志保
ひたすらに悪趣味なその光景に、何故この場所を勧められたのかと思ってしまう。
北沢志保
これ以上ここにいても何も無さそうだし、もしかしてからかわれただけかも、と帰ろうとした瞬間。
北沢志保
一際強い風が吹いた。それによって街の至る所から風の鳴る音が響き、そして。
北沢志保
下からおびただしい数の何かが飛んで来た。
北沢志保
思わず飛び退いてしまったのは驚いた訳ではなく、言わずもがな危険回避である。
北沢志保
飛んで来たそれを一つ拾う。何てことは無い、ただの花弁の様だった。
北沢志保
そうか、これが見せたかった物なのかもしれない。
北沢志保
誰もいない街。屋上。風によって響く音、そして、街の中を延々と舞う薄桃の花びら……
北沢志保
……
北沢志保
……気持ち悪っ。
北沢志保
何なのだろうこの不気味な光景は。私はここまで必死に登って来て何を見せられてるのだろう。
北沢志保
全国ゴーストタウン選手権堂々の一位であるこんな光景を見るために私は貴重な休暇を消費したのか
北沢志保
しまった。完全に失敗した。短い人生を無駄にしてしまった。近隣の方の意見を大切にすべきだった
北沢志保
憤りと脱力感に満たされた私は、またライトを手に屋上の入り口へと戻って行った。
北沢志保
そうか、また同じ道を、戻らなければならないのか。負の感情は増すばかりだ。
北沢志保
ここを勧めた愚か者には文句の一つでも言わないと気が済まない。
北沢志保
まだ戻らないつもりで居たが、文句を言う為に早めに実家に帰ることにした。
北沢志保
世界から見放された呪われた街。世界の誰もがそう言ったが。
北沢志保
どう言うわけか、ここを勧めた私の両親にとっては、
北沢志保
想い出の地であるらしい。
(台詞数: 50)