北沢志保
可奈!
矢吹可奈
志保ちゃん!
北沢志保
ーーー志保が医務室を出ると、可奈が抱きついてきた
北沢志保
ーーーそれを志保はしっかりと抱きとめた
北沢志保
ここにいるのね、可奈………。
矢吹可奈
うん。私はここにいるよ。
北沢志保
ーーー目で見て、肌で感じて初めて実感する。大切な人を取り戻せたことを
矢吹可奈
ねえ、志保ちゃん。海岸まで行かない?
北沢志保
ええ、行きましょう。
矢吹可奈
ーーー
矢吹可奈
志保ちゃんって、私と並んで歩く時は必ず私の左側につくよね。
北沢志保
それは……その………
矢吹可奈
………私の左目を傷付けたことに、責任を感じてるから?
北沢志保
………………そうよ。
矢吹可奈
この傷は私が私である証。志保ちゃんが責任を感じる必要なんてないんだよ?
北沢志保
でも、あなたの左目はもう戻ってこな………
矢吹可奈
………大丈夫だよ。
矢吹可奈
ーーー可奈が、左側にいた志保の手を握った
北沢志保
!?…可奈、どうして………!?
矢吹可奈
ニヒトに乗る前、私の体はほとんど残ってなかった。この左目も。
矢吹可奈
だけど私の体が再生させられた時、左目も見えるようになったんだ。
矢吹可奈
一度失ったけど、また取り戻した。だから、もう気にしないで。
北沢志保
うん……できる限り、そうするわ。
矢吹可奈
そ、そうだよね。いきなり気にするなって言っても無理だよね。
矢吹可奈
あ、着いたよ。志保ちゃん、ここで話したこと覚えてる?
北沢志保
たしか……"この海の先はどうなってると思う?"だったかしら?
矢吹可奈
うん。………あれからもう1年経ったんだね。
北沢志保
そうね。1年前、私は何も知らなかった。
北沢志保
知らないことばかりで、何もかもが変わって………
北沢志保
一度、あなたから逃げたこともあった。
北沢志保
でも、おかげであなたの事がやっと分かった。
北沢志保
それだけは、よかったと思ってる。
矢吹可奈
志保ちゃん………。
矢吹可奈
確かに、変わってしまったものもあるけど………
矢吹可奈
……変わらないものもあるんだよ。それだけは忘れないで。
矢吹可奈
ーーー恵美がこちらに向かって手を振っている
北沢志保
恵美さん?私達を呼んでる?
矢吹可奈
行こう、志保ちゃん!
北沢志保
………ええ。
矢吹可奈
ーーー多くの傷を負った
矢吹可奈
ーーー多くのものを失った
矢吹可奈
ーーーもう、何も知らなかったあの日には戻れない
矢吹可奈
ーーーそれでも、守れたものがある。得られたものがある
矢吹可奈
ーーーだから言える
矢吹可奈
ーーー「此処は楽園だ」………と
(台詞数: 45)