北沢志保
コクリ…
北沢志保
僕は、彼女を守る為に無言で頷く選択をした。
北沢志保
彼女からすれば、僕は『偽物の赤目の死神』なのだ。
北沢志保
それが、彼女にとっての事実なのであれば、それを尊重するだけだ。
北沢志保
けれども、真実は時に、残酷である。
北沢志保
ボクは『赤目の死神』なのだから…
北沢志保
それを打ち明ける必要はないにしても…
北沢志保
墓場まで持っていく覚悟があるにしても…
北沢志保
罪悪感は芽生え、僕の身体を…ボクを蝕んでいくだろう。
北沢志保
でも、この役目は僕にしか背負う事ができないことであり。
北沢志保
いままで汚れてきたボクにお似合いだ。
北沢志保
そして、彼女はこんな僕に打ち明けてくれてたのだから…
北沢志保
なにより、その信頼を裏切る訳にはいかない。
北沢志保
いつかボクを追い詰める事になったとしても、だ。
北沢志保
ならば、これは必要な嘘だ。
北沢志保
そうまでしてでも守りたい。
北沢志保
そう思う何かが、僕の中で芽生えつつあった。
北沢志保
今のボクにはまだ、それが理解できないけれど…
北沢志保
シホ・キタザワという枷が僕の手足に嵌められる感覚だけは、確かに感じた。
北沢志保
「ありがとう…ありがとう」
北沢志保
瞼に薄ら涙を浮かべながら、シホは暫くそう言い続けた。
北沢志保
"「嘘つき」"
北沢志保
その言葉に混じって、かつて、大切な人に言われた言葉が聞こえてくる。
北沢志保
まるで、ボクを否定する様に、責める様に、脳内で繰り返し響き渡る言葉。
北沢志保
「シャル…少尉…!?」
北沢志保
僕の名を呼ぶ、シホの声で我に返る。
北沢志保
シャル「シホ…?」
北沢志保
キタザワの目は怯えていた。
北沢志保
どうして怯えているのか、その理由は、間もなく判明するのだが…
北沢志保
「その…!」
北沢志保
シホは、ボクの身体、その右側を指差して、声を震わせる。
北沢志保
僕は、そのまま視線を落とすと、着ていた真っ白のシャツが紅く染まっているのが分かった。
北沢志保
シャル「血…」
北沢志保
「た、大変です、なんとかしないと!!」
北沢志保
ポツリ、と呟く僕を見て、シホは状況を飲み込んだのか、慌てて声をあげた。
北沢志保
「大丈夫ですか!?」
北沢志保
「何か、止血するものを探さないと!」
北沢志保
シャル「大丈夫だよ」
北沢志保
「え?」
北沢志保
シャル「暫くすれば勝手に止まるから」
北沢志保
シャル「古傷から、こうやってたまに、血が出るんだ」
北沢志保
ずっと前に付けられた右肩下の斬り傷。
北沢志保
この傷は、今でも消えない。
北沢志保
それだけボクは恨まれているのだろう。
北沢志保
これはボクの消せない罪を象徴する傷でもある。
北沢志保
ずっと、向き合わなければならない傷。
北沢志保
最近は血が出ることなく、落ち着いていたのに…。
北沢志保
ああ、そっか、そうだよね。
北沢志保
あの声が聞こえてきたってことは…。
北沢志保
そういうことなんだろう。
(台詞数: 50)