深緑の熟練職人
BGM
ライアー・ルージュ
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-11-13 20:21:21

脚本家コメント
楽しい今イベ最中、微妙に投稿し辛い雰囲気。
しかも話は平行線。
前作 家族写真
http://m.ip.bn765.com/app/index.php/drama_theater/info/uid/1300000000000031424/seq/398

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北沢志保
ふと外を見れば、鳥が木漏れ日のスポットライトを浴びている。
北沢志保
やがて囀りは風と唄い、葉音は旋律を奏で、言うなれば森のコンチェルト。
北沢志保
そんな脚色された光景を窓際の席で見守る私。
矢吹可奈
『珈琲、おかわりください!』
北沢志保
可奈の発言で生まれた現状だ。
北沢志保
では何故、本来珈琲を淹れる立場にある私がこうして優雅に座っているのか。
北沢志保
それは、あの噂に名高い水瀬家の執事様に淹れて頂く事になったからである。
北沢志保
彼は、件の可奈の発言に対して、私が応えるよりも早く「畏まりました」と辞儀をし、
北沢志保
カウンターの方へ颯爽と歩いて行ってしまった。
矢吹可奈
「あわわわ……」
北沢志保
「……」
矢吹可奈
「あわわわわあわわ……」
北沢志保
「うるさい」
矢吹可奈
「だ、だって私ってば何だか凄い所のし、執事さんに珈琲淹れろだなんて」
矢吹可奈
「ああああ……」
北沢志保
「ふぅ、大丈夫よ。可奈」
矢吹可奈
「志保ちゃん……」
北沢志保
「世の中には『覆水盆に返らず』という言葉もあるみたいだし」
矢吹可奈
「うわーん! 志保ちゃんの意地悪ー!」
北沢志保
「『諦めが肝心』とも言うわね」
矢吹可奈
「せめて慰めてー!」
北沢志保
「でも……ありがと」
矢吹可奈
「あ、え?」
北沢志保
私は席を立ち、カウンターに向けて歩き出す。
北沢志保
「手伝います」
北沢志保
言おうとして――留まる。
北沢志保
真剣な眼差しでサイフォンと向き合う姿。
北沢志保
華麗で優美な所作に思わず魅入ってしまう。
北沢志保
あの場所で、私は不穏因子にしかなり得ないだろう。
北沢志保
私は可奈へ席を移動する旨を伝え、カウンター越しに別世界を眺めることにした。
北沢志保
――――――
北沢志保
カウンターに並べられた珈琲は2つ。
北沢志保
「冷めない内にどうぞ」と新堂さんは素敵に微笑む。
北沢志保
不覚にも……少しだけときめいてしまった。
北沢志保
「あ、ありがとうございます。いただきます」
矢吹可奈
「いただきます……」
北沢志保
「……ん」
北沢志保
ほのかな苦味の中に感じるフルーティな味わいと滑らかな舌ざわり。
北沢志保
それでいて繊細で、えっと……シルキーマウスフィール、だっけ。つまり……
北沢志保
「美味しいです。とても」
北沢志保
虚飾のない、率直な感想。
北沢志保
美味しい……。
北沢志保
でも……こんな風に美味しい珈琲を飲むと、同時に寂しくもなる。
北沢志保
チラつくのは彼女の影。
北沢志保
我ながら重症だと思う。
北沢志保
「……」
北沢志保
何か楽しい話をしないと……折角、可奈が持ち直してくれたのだ。
北沢志保
でも……何を?
北沢志保
「――では、昔話など如何でしょう?」
北沢志保
そう言って静寂を破ったのは、意外にも新堂さんだった。

(台詞数: 50)