深緑の対面団欒
BGM
bitter sweet
脚本家
親衛隊
投稿日時
2015-07-20 19:23:10

脚本家コメント
またも遅筆。
前作 夢うつつ
http://m.ip.bn765.com/app/index.php/drama_theater/info/uid/1300000000000031424/seq/381

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矢吹可奈
「すごーい、綺麗〜!」
北沢志保
深緑に包まれた喫茶店。その店内で、サイフォンセットを物珍しそうに見る少女は言う。
北沢志保
矢吹可奈。
北沢志保
狭すぎる私の交流関係の中で、特に心を許せている友人だ。
北沢志保
尤も……可奈が私を友人として見てくれているかなんて、皆目見当がつかないが。
矢吹可奈
「それにしても、志保ちゃんが無事で本当に良かった……」
北沢志保
「大袈裟ね」
矢吹可奈
「大袈裟って……私、すごく心配したんだよ?」
北沢志保
可奈からの電話は至ってシンプルな内容だった。
北沢志保
会いたい――。たったそれだけ。
北沢志保
たったそれだけの為に、1人で、こんな森の奥深くまで、わざわざやって来たのだ。
北沢志保
それも、元はと言えば私の所為だ。
北沢志保
実はこのお店に勤める少し前に、私は外部からの連絡を全て断っていた時期があった。
北沢志保
無論、友人である可奈も例には漏れず。
北沢志保
彼女からしてみれば、常に当たり前だったものが、ある日忽然と消えてしまったことになるのだ。
北沢志保
余計な迷惑と不安を与えてしまったことを、今では猛省している。
矢吹可奈
「ねえ、志保ちゃん。どうして……今まで連絡くれなかったの?」
北沢志保
至極当然に投げられた質問に対し、私は――
北沢志保
「ごめん」
北沢志保
予め用意していた謝罪の言葉を吐いた。
北沢志保
狡猾に誤魔化し、逃げる為に。
矢吹可奈
「……そっか。仕方のないことなんだね」
北沢志保
驚くほど素直に引いてくれた。
北沢志保
そして何かを察したのか、それ以上の詮索はなかった。
北沢志保
「……ごめんなさい」
北沢志保
堪えきれず、また頭を下げた。
矢吹可奈
「あわわ……そんな謝らないでよ」
矢吹可奈
「でも……1つだけ、教えてくれる?」
北沢志保
「ええ」
矢吹可奈
「私のこと、嫌いになったりとか……してないよね?」
北沢志保
「……」
北沢志保
「当たり前でしょ。そんなわけない」
北沢志保
力強い、本心からの言葉だった。
矢吹可奈
「ほ、ほんとに?」
北沢志保
「誓って」
矢吹可奈
「良かった〜!」
矢吹可奈
「なんだか私、今とーっても嬉しい可奈って!」
北沢志保
「……」
矢吹可奈
「か、可奈って!」
北沢志保
「……」
矢吹可奈
「で、でも本当に良かったよ〜!」
矢吹可奈
「私、志保ちゃんが事件にでも巻き込まれたんじゃないかと思って――」
北沢志保
沈黙にも挫けず続ける。
矢吹可奈
「ずっと神さまにお願いしてたんだ。お願い可奈って良かったというか――」
北沢志保
「もういいから」
矢吹可奈
「えー?」
北沢志保
こんな子だったっけ?
矢吹可奈
「えへへ〜」
北沢志保
いや、この子なりに気を使ってくれているのだろう。
北沢志保
自然と笑みがこぼれ、団欒の時間は和やかに過ぎていった。

(台詞数: 50)