北沢志保
我が家には魚も貝も採れない全くもって無能な駄神と言うべきお稲荷さまがいます。
矢吹可奈
……ごめんなさい……
北沢志保
まったく。魚は釣れないかもしれないとは予想したけど…貝ですら採れないとはね。
矢吹可奈
…ごめんなさい…貝はちょっと苦手というか…
北沢志保
何?なんかあるの?
矢吹可奈
日本神話じゃ猿田彦は海で貝を採っている時に大きな貝に指を挟まれて身動き出来なくなってね。
矢吹可奈
そのまま溺れて死んじゃうんだよ。だから私もそうなったらと思うと…
北沢志保
…馬鹿ね。
矢吹可奈
え?
北沢志保
猿田彦はその時一人だったんでしょうけど。
北沢志保
今お稲荷さまの側には私がいるでしょ。
矢吹可奈
志保ちゃ〜〜ん‼︎
北沢志保
抱きつくな。毛皮が暑い。あと獣臭い。
矢吹可奈
またまた〜〜。嬉しいくせに。
北沢志保
よし、沈めるか。
矢吹可奈
ごめんなさい。調子にのりました…
北沢志保
それで何も採れなくて落ち込んでたら声を掛けられたんだって?
矢吹可奈
うん。川魚を採ってこの近くのスーパーに卸してる漁師さんらしくて。
北沢志保
それでこの鰻を貰ったのか…ちゃんとお礼は言ったわよね?
矢吹可奈
当たり前だよ。そこまで礼儀知らずじゃないよ。兵十さんっていう人だったよ。
北沢志保
…兵十さん…どこかで聞いたような……
矢吹可奈
さ、志保ちゃん。ウナギウナギ。
北沢志保
じゃ捌きますか。背開きにしようかな。
矢吹可奈
志保ちゃんは関東風なんだね。
北沢志保
お稲荷さまの時は関西風に腹開きよ。
矢吹可奈
えーと、なんか物騒な言葉が聞こえたような…
北沢志保
よし、終了。肝吸いも作ろうかしら。
矢吹可奈
いいね、肝吸い。
北沢志保
じゃ、お稲荷さまの時も肝吸い作りましょ。
矢吹可奈
えーと…
北沢志保
それじゃ焼きましょうね。
矢吹可奈
炭火で焼くのっていいよね〜。
北沢志保
じゃあ、お稲荷さまの時も炭火ね。
矢吹可奈
……
北沢志保
ふぅ、焼けたわ。
矢吹可奈
わーい、美味しそう。早く食べよう!
北沢志保
これがお稲荷さまの取り分ね。
矢吹可奈
えーと、志保ちゃん?これ背骨だよね?
北沢志保
ええ。骨せんべいよ。美味しいわよ。
矢吹可奈
そりゃ美味しいだろうけど……
北沢志保
食っちゃ寝してる駄神にはこれでも勿体無いくらいよ。
矢吹可奈
ええ〜〜。
北沢志保
冗談よ。はい、お稲荷さまの分。
矢吹可奈
わーい、美味しそう。いっただっきまーす。
北沢志保
兵十さんに感謝して食べるのよ。
矢吹可奈
はーい、兵十さんありがとー!
北沢志保
食べたら帰る準備をするわよ。
矢吹可奈
うん、今日は楽しかったよ。
北沢志保
あ、帰りの電車賃一人分しかないからお稲荷さまは自力で帰ってね。
矢吹可奈
無茶だよ〜〜。
(台詞数: 50)