羞明、或いは
BGM
絵本
脚本家
mayoi
投稿日時
2015-04-10 22:07:40

脚本家コメント
崩落する世界への哀惜。
今さら気付いたけどdistort/disturbと構図ほぼ被りじゃんね?

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北沢志保
想像しないこと。孤独であること
北沢志保
それが私の幸福。たったひとつの、生きる道。
北沢志保
より良いものを知らなければ現状に満足できた。
北沢志保
他人と接しなければ卑俗な人間に合わせる必要もなかった。
北沢志保
心を隠し、胸の傷痕を舐めながら生きていく。指差し笑われようとも構わなかった。
北沢志保
私だけの楽園。私だけの、世界。
矢吹可奈
──要するに怖いの?
北沢志保
鋭く立ち上がる可奈。丸椅子が倒れる。
矢吹可奈
──人の正しさに触れて自分の正しさが傷付くこと、そして……。
矢吹可奈
──人を傷付けることが、怖いんでしょ?
北沢志保
笑止。それを振りかざすことを正義、あるいは侮辱と呼ぶのだ。私たちが崇めるものだ。
矢吹可奈
──それくらい分かるよ。だって。
北沢志保
人は正義の下に残虐性を発揮する。勝者こそ真の正義となる、腕力の命ずるままに。何故ならば。
矢吹可奈
──志保ちゃんの目、助けてって叫んでる。
北沢志保
貧弱ならば、それは悪なのだから。
矢吹可奈
──私じゃ力に、なれないかな?
北沢志保
可奈の躊躇いがちな瞳が刺す。
北沢志保
視線を合わせることは、出来なかった。
北沢志保
気分が悪くなった私は可奈に背を向け、部屋を出た。
北沢志保
それからは鏡を見ていた。
北沢志保
蛇口から吐き出された水が洗面台に飛び散り、しかし排水口へと飲み込まれていく。
北沢志保
だから私の映る、鏡だけを見ていた。気の済むまでそうしていた。
北沢志保
部屋に戻ると、時計の短針は重力に逆らうように上を向いていた。
北沢志保
全体を見渡して誰も居ないことを確認する。
北沢志保
私しか居ない部屋。ひとりだけの、世界。
北沢志保
慎重に、その場所へ近付いた。丸椅子が置かれていた。
北沢志保
触れるか触れないかの距離を指先で撫でる。
北沢志保
別にこれが正義だとは思わない。ただ、触れてはならなかった。
北沢志保
想像しないこと。孤独であること。
北沢志保
それが私の幸福。たったひとつの、生きる道。
北沢志保
より良いものを知らなければ現状に満足できた。
北沢志保
他人と接しなければ卑俗な人間に合わせる必要もなかった。
北沢志保
傷付いた猫は自身を舐め殺してしまうことがあるという。
北沢志保
だが、それに何の問題があるのだろう。傷を癒し、幸福を求める心を誰が嗤えるだろう。
北沢志保
お願いだから放っておいてほしい。
北沢志保
私の幸福が、壊れてしまわぬよう。

(台詞数: 36)