北沢志保
通信は依然として途絶。緊急用の信号を送っても反応はありません。
矢吹可奈
やっぱり向こうで何かが起きてるんだ…。みんな無事だといいんだけど。
北沢志保
…あの、隊長。
矢吹可奈
なに?
北沢志保
……いえ、やっぱりいいです。
矢吹可奈
そう言われると気になっちゃうんだけど…。何か悩み事?
北沢志保
……隊長は、私が間違っていたと思いますか?
矢吹可奈
…えっと?何の話?
北沢志保
モガミ軍曹の件です。
矢吹可奈
ああ…。んーと、難しい問題だよね。シホちゃんの言いたかったことも分かるし…。
北沢志保
軍曹がまとめた報告書を見て、あの場で何があったのか知識としては理解しています。
北沢志保
身近な人を失うというのが悲しいことだというのもわかります。…でも、それでも。
北沢志保
私たちは軍人なんです。戦うべき時に戦わなければ、もっと大勢の人が犠牲になる…。
北沢志保
悲しむより先に、今できることを精一杯やるべきなんだと。…そう思っていました。
矢吹可奈
………。
北沢志保
ですが、一度冷静になって、自分の立場になって考えてみたら…わからなくなったんです。
北沢志保
まだ身近な誰かを失った経験がない私が、いざその時が来た時に平然としていられるのかどうか…。
北沢志保
あの時、もっと軍曹にかけるのに相応しい言葉があったんじゃないかって…。
北沢志保
隊長、教えてください。私は間違っていたんでしょうか…?
矢吹可奈
う〜ん…。ごめん、私にはわからないよ。
北沢志保
わからない、ですか。
矢吹可奈
うん、ごめんね。
北沢志保
…隊長も、身近な人を何人も失ったんですよね。
矢吹可奈
……うん。
北沢志保
…やっぱり、つらかったですか?
矢吹可奈
…うん。つらくて、悲しくて、苦しくて…目の前が真っ暗になったみたいだった。
北沢志保
どうやって、立ち直ったんですか?
矢吹可奈
みんなが支えてくれたから、だよ。
北沢志保
みんなが…?
矢吹可奈
存在が消えても、心には残り続ける。だからこそ受け入れなきゃいけないってある人は教えてくれた
矢吹可奈
悲しみや憎しみで前を見失わないように、自分の在り方や進むべき方向を示してくれた人もいた。
矢吹可奈
いろんな人の助けと、支えと、想いと言葉があったから…私はいま、ここにいる。
矢吹可奈
何が正しくて、何が間違ってるとか…たぶんそんな簡単に割り切れることじゃないと思うんだ。
矢吹可奈
時間をかけて整理して、時には誰かに助けてもらって、自分なりに向き合っていって…。
矢吹可奈
そうしてようやく、自分がどうしたいのか、どうしたらいいのか見えてくるんじゃないのかな…。
北沢志保
……、………。
矢吹可奈
ご、ごめんね!なんだか偉そうだったよね。あんまり気にしないで。
北沢志保
いえ。…ありがとう、ございました。
矢吹可奈
…あ、見えてきたよ!シホちゃん、突入準備に入って!
北沢志保
了解!
北沢志保
(…この人は、私が思っていたよりもずっと多くのものを背負って生きている…)
北沢志保
(私に、この人の隣に並んで歩く資格があるのだろうか…)
(台詞数: 42)