北沢志保
【秋の夜風が、火照った顔に心地好い。】
北沢志保
「アンコール無しなのは、残念でしたね。」
北沢志保
『時間が押してたんじゃろう。次のバンドが控えておったから、いた仕方有るまい。』
北沢志保
「あれだけ盛り上がった後の人達は、さぞやりにくいでしょうね。」
北沢志保
『次の連中も、そこそこ名の通ったブルースバンドだがの。あの後では堪らんじゃろ。』
北沢志保
「…………最後の曲の間奏の、千鶴さんと四条貴音さんのソロの掛け合い……、」
北沢志保
「素敵でしたね。今まで聞いたどんな演奏よりも、響きました。」
北沢志保
「あの二人が表舞台に立たないのは……」
北沢志保
『……小娘が、知った口を聞くな……。』
北沢志保
「でも……」
北沢志保
(タッタッタッタッ…)「………?」
二階堂千鶴
(ゼェゼェ)「も、もし……」
北沢志保
『……!』
二階堂千鶴
(ゼェゼェ)「お、オーナー様……、ですわね?」
北沢志保
「え、千鶴さん?何を……」
北沢志保
『………うむ、いかにも儂がオーナーじゃよ、お嬢さん。』
北沢志保
「会長?………」
二階堂千鶴
「……。如何で御座いましたでしょう、あの子達の演奏は……。」
北沢志保
『うむ、ベースはもとより他の三人も、まだまだ未熟じゃな。』
北沢志保
『じゃがしかし、大いに見処が有る。』
北沢志保
『研鑽惜しまず、そして君達大人がしっかりと導いてやれば、きっと大成するであろう。』
二階堂千鶴
「……はい、肝に銘じますわ。」
北沢志保
『あのドラムは、松田の娘か。あやつは娘にピアノでなく叩く方を教えたのか。』
二階堂千鶴
「松田先生は、ピアノよりドラムの方が本職だと公言して憚らない方ですから。」
北沢志保
『じゃから儂はあずさに言ったんじゃ。彼奴はピアノ教師の癖に叩く方ばかり教えたがるから、』
北沢志保
『千鶴の教師には向かんと……』
北沢志保
『……………。』
二階堂千鶴
「………………。」
北沢志保
『……まあ、その、……元気でやっとる様だな。………あずさも息災か。』
二階堂千鶴
「ええ、相変わらずですわ。」
北沢志保
『戻って来る気は……無いのか?』
二階堂千鶴
『それでは快く思わない者も居るだろうと、お父ちゃんもお母ちゃんも申しておりましたわ。」
北沢志保
『そうか……。』
北沢志保
「……さっさと戻って来て、私を解放してくれると嬉しいんですけど。」
北沢志保
『お、お前、日本有数の二階堂グループの後継者候補が、何でそんな嫌なんじゃ!』
北沢志保
「それについては、今まで散々文句を言ってきた筈ですが。」
北沢志保
「覚えてないなんて、お祖父ちゃんボケが始まっちゃったのかしら……。」
北沢志保
『戯けを抜かすな!第一儂がボケたら、介護するのはお前等じゃぞ!』
北沢志保
「ご免なさい、この前の親族会議で、お祖父ちゃんがボケたらすぐ施設に入れようって……。」
北沢志保
『お前らヒドイ!』
二階堂千鶴
(何だか楽しそうですわね……。)
(台詞数: 41)