ラムネ色 盛夏
BGM
素敵なキセキ
脚本家
不明
投稿日時
2014-08-08 12:02:24

脚本家コメント
目が覚めた。と同時に、蝉のがなり声が強引に脳内に侵入してくる。
時計を見るともうお昼頃。随分と寝てしまったようだ。それにしても…
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14歳の夏休み。
ラムネの瓶の音が、涼しく響いた。

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北沢志保
「…暑い」
北沢志保
寝汗が凄い。体がベタベタする。
北沢志保
これだから、夏の朝は好きになれない…まあ、もう昼なんだけど。
北沢志保
「なんて言\ミーンミンミンミーン/なんかして…」
北沢志保
「・・・・・・」
北沢志保
下らない独り言ではあるけれど。蝉に掻き消されるのは、なんだか癪だ。
北沢志保
…あ、カーテンを開けなくちゃ。
北沢志保
シャー!っと、わざと大きな音を立てる。ふふ、私の勝ちね。
北沢志保
などと、また馬鹿なことを考えていると…
北沢志保
『やあ!夏だよ!晴れてるよ!』
北沢志保
自己主張が過剰気味な空と雲が、視界いっぱいに待ち構えていた。
北沢志保
言われなくても、今が夏だということくらい知っているというのに…全く。
北沢志保
その光景は、私の目にはあまりに眩しく、堂々と映る。だから結局こう言う他ないのだ。
北沢志保
「夏、ね…」
北沢志保
――ガチャ。
北沢志保
冷蔵庫を開ける。言うまでもなく麦茶のために。
北沢志保
寝起きに冷蔵庫を開ける理由なんて、それ以外に存在しない。
北沢志保
そんな訳で、ドアポケットに目をやった。だがそこに麦茶は…
北沢志保
「…ない」
北沢志保
正確に言えば、ピッチャーはあるけど、中の茶色が見当たらない。
北沢志保
「あいつか…」
北沢志保
弟は、やっぱりまだ子供なのだ。だから平気で、空の容器を庫内に入れたままにできるのだ。
北沢志保
困った。生憎他の飲み物もない。スイカも昨晩、家族3人で食べてしまった。そして水道は、温い。
北沢志保
もうダメだ。私はこのまま台所で死ぬんだ。でもきっと天国には、冷たい飲み物もいっぱい…
北沢志保
\ ピ ン ポ ー ン ! /
北沢志保
…お客さん?誰だろう。手向けの花でも届けにきたの?
北沢志保
「はい、どちら様…」
矢吹可奈
『開けて~!今日も暑いね~!』
北沢志保
いや、誰よ。
矢吹可奈
『可奈です!あ、志保ちゃん?』
北沢志保
発言の順番、逆だから。というか来るなんて言ってたっけ…?まあいいや。
北沢志保
――ガチャ。
北沢志保
「…いらっしゃい。何か用?」
矢吹可奈
「あれ…?志保ちゃん、ちょっとご機嫌斜め?何かあったの?」
北沢志保
「実はね…私、もう死ぬのよ…」
矢吹可奈
「え…?嘘…そんな……」
北沢志保
可奈が、死にそうな声を出した。ヤバイ。関係のない人間が死んでしまう。
北沢志保
「…っていうのは冗談。本当は、喉が渇いてるだけ…」
北沢志保
「ごめんね?」と付け加えておく。今日一番、感情の籠った声で。
矢吹可奈
「なんだぁ…私、心臓止まるかと思ったよ~…」
北沢志保
私もよ。
矢吹可奈
「でも喉が渇いてるならちょうど良かった!ほら、これ見て?じゃじゃ~ん!」
北沢志保
キ ン ♪
北沢志保
涼しい音が響いた。可奈の小さな右手にラムネの瓶が2本。
北沢志保
……ラムネ?
北沢志保
「ねえ、よく聞いて…」私は彼女の肩をガッと掴む。
矢吹可奈
「な、なに…?あ、ラムネが苦手だったとか…?それなら私、もう一回…」
北沢志保
「大好きよ、可奈!」 ギュッ!
矢吹可奈
「ええ!?突然どうしたの、志保ちゃん!?一体何が…!?」――
北沢志保
――私達は暗くなるまで歌った。蝉の声なんて、もう気にならなくなっていた。

(台詞数: 50)