矢吹可奈
…その手紙は、志保ちゃんからだった。本当にいきなりだった。
北沢志保
「矢吹可奈さん、お元気ですか」
北沢志保
「私は、正式に765プロダクションに所属することになりました」
北沢志保
「この手紙は、謝罪と、お願いを一つしたくて書きました」
矢吹可奈
…お願い?
北沢志保
「招待したアリーナライブ、見ていただけたでしょうか」
北沢志保
「…私達は、思うような結果を出すことが出来ませんでした」
北沢志保
「まず謝りたいことは、ミニライブでの可奈さんへの言動です」
北沢志保
「可奈さんがメンバーを抜けたきっかけは私だと思っています」
北沢志保
「可奈さんの気持ちを考えず、深く傷つけてしまったことを強く後悔しています」
矢吹可奈
…ううん、そんなこと無い。志保ちゃんの言ってたこと、間違いじゃなかったよ。
矢吹可奈
だって志保ちゃん達は頑張ってステージに立てたんだから。…私にその資格が無かっただけ。
北沢志保
「今では、可奈さんの言っていたことが正しかったんだと思います」
北沢志保
「私達は、どうしようもなく未熟で、不安定で、経験不足でした」
北沢志保
「未熟な私達には、みんなで協力してライブに取り組む必要があったのに…」
北沢志保
「『みんなで』と提案した可奈さんへ、私はひどいことを言いました」
北沢志保
「本当は、私には765プロにいる資格は無いのかもしれません」
北沢志保
「あなたのような人にこそ、ふさわしい場所だと思います。」
北沢志保
「そこで、お願いがあります。私なんかが偉そうに言うことではないかもしれませんが…」
北沢志保
「もう一度、アイドルをやってみませんか」
矢吹可奈
…え?
北沢志保
「勝手ながら、アイドルの追っかけをやっている事務所の事務バイトの子から…」
北沢志保
「あなたが歌の勉強をしている、土手で楽しそうに歌っていることを聞きました」
北沢志保
「それを聞いて、私は嬉しくなりました。まだ諦めていなかったんだと」
北沢志保
「正直に言うと、私は今、アイドルとしてやっていくことに迷いがあります」
北沢志保
「でも、あなたとなら、可奈さんとなら、道が見える気がするんです」
北沢志保
「あの時『みんなでがんばろう』と言った可奈さんの言葉…」
北沢志保
「今さら甘えさせてもらおうなんて、都合がよすぎるかもしれません」
北沢志保
「だから、私のお願いではなく、可奈さんの一つの選択肢として聞いてくださってかまいません」
北沢志保
「今、765プロは新規プロジェクトの立ち上げで、新たにアイドルを募集しています」
北沢志保
「可能かどうかは分かりませんが、私も可奈さんの事をできる限り推薦したいと思っています」
北沢志保
「今の私にはあなたが必要です。過去にあんなことはあったけど…」
北沢志保
「それでも手を取り合っていけると信じています」
矢吹可奈
…志保ちゃん。
矢吹可奈
気づいたら私は涙をぼろぼろこぼしていた。理由はわからない。だって私はばかだから。
矢吹可奈
それでも、抑えていた何かが、我慢していた気持ちが、志保ちゃんの手紙であふれだしたんだ。
矢吹可奈
…志保ちゃんが、私の事を待ってくれている。…それだけで十分だった。
矢吹可奈
立ち直れた私が、今度は歩き出す理由。
矢吹可奈
輝きは、向こう側で待ってる。
矢吹可奈
なんて嬉しいんだろう。またアイドルができる。歌が歌える。…私、こんなにアイドルしたかった。
北沢志保
「もし、アイドルの募集に来てくれるのであれば、私の電話番号に連絡して下さい」
北沢志保
「…そのつもりがなくても、私の事を嫌いでなければ…声を聞かせてください。待ってます」
矢吹可奈
……
矢吹可奈
…………
矢吹可奈
「…もしもし…あ、志保ちゃん、私…矢吹可奈です!」
(台詞数: 45)