周防桃子
学校に到着しました。車で急いで来たのですが、もう本当に時間がありません。ギリギリです。
秋月律子
「さ、迷わないようについて来て」先生に手を引かれ歩いていく桃子ちゃん。周りは人だかりで一杯
秋月律子
こんなところで迷ったら大変です。桃子ちゃんは先生の手を離さないようにシッカリと
周防桃子
握っていました。
如月千早
ーーー
如月千早
「…あれ?確かここに楽譜を入れたはずなのに…」場所は変わって合唱部の控え室。そこでは
如月千早
桃子ちゃんのお姉さんが忘れ物に気づいていました。さあ大変です。
如月千早
あの楽譜はとても大切なものです。もしかしたらーー何処かで落としたかも?
如月千早
さあどうしましょう。今から探しに行くのはもう間に合いません。刻一刻と時間が近づいています。
如月千早
このままだと最終確認が出来ないまま、本番を迎えてしまうかもーー
秋月律子
「はーい!みんな~頑張ってる?」あ!そこに先生がやって来ました。手にはジュースの入った
秋月律子
スーパーの袋です。皆ジュースを手にとって喉を潤します。
如月千早
「…あの、すいません」お姉ちゃんが先生に話しかけに一歩前に出ます。
秋月律子
楽譜をなくしたのを正直に話すのも、すごく勇気のいる話です。先生は黙って聞いていますが。
秋月律子
「ふーん…千早、それよりも貴方の為に遥々やって来た子がいるんだけど」
秋月律子
「まずはその子に会ってくれる?」
如月千早
「え?」お姉ちゃんが思わず聞き返すと、そこには
周防桃子
「お姉ちゃん!これ、なーんだ!!」桃子ちゃんです!そして彼女の手には忘れ物の楽譜が!!
如月千早
「桃子!」お姉ちゃんもびっくりです。これで楽譜も無事に届けられました
秋月律子
「さ、もう時間が無いけど、今の内に確認しておきなさい」
如月千早
「はい!」お姉ちゃんのいい笑顔です。いつも桃子ちゃんに見せてくれるあの笑顔。
周防桃子
「お姉ちゃん!頑張ってね!!」桃子ちゃんもお姉ちゃんを応援します。
周防桃子
この後桃子ちゃんは先生の計らいで、一番見やすい場所からお姉ちゃんの歌を聴けるのです。
如月千早
「桃子…ありがとう。お姉ちゃん、頑張るから!」お姉ちゃんも桃子ちゃんに勇気付けられて、少し
如月千早
緊張がほぐれましたーーー
周防桃子
…
秋月律子
お姉ちゃんはステージでは一番最後の大トリです。毎年学校で一番上手い生徒はこうして皆を前に
周防桃子
一人だけ舞台で歌うのを許されています。今年はお姉ちゃんがそれをします。桃子ちゃんも誇らしげ
如月千早
あ!お姉ちゃんが出て来ました。客席の拍手を一斉に受けて、一礼します。少し緊張してるかな?
如月千早
青く薄暗いスポットライトも照らされ、水面の波紋のように騒ついてた客席も次第に静まり返ります
如月千早
さあ、音楽も流れます。文化祭最後でお姉ちゃんの独断場。もう催し物はどこも終わってるから
如月千早
全視線は今、この場に注がれています。そして、お姉ちゃんはゆっくりとーーー口を開きました。
周防桃子
桃子ちゃんも、あそこまで凄い舞台で歌うお姉ちゃんを見るのは初めて!お姉ちゃん、頑張って!
秋月律子
曲はこの日の為に作られました。果たして観客はその歌をどう感じるでしょうか?
如月千早
ーーー『眠り姫』
(台詞数: 35)