如月千早
そういえば、私を探してたって……
四条貴音
そうでした。私、千早に渡したい物があったのです。
四条貴音
この子を貴方に、差し上げたいのです。
如月千早
え、それは……ギター!?そんな、駄目ですよ!私なんかに勿体無い!
四条貴音
ええ、確かにこれは、一般的な物より、少しだけ値の張る品です。
四条貴音
しかしそれでも、貴方に使って頂きたい、理由が在るのです。
如月千早
理由……?それは一体……
四条貴音
楽器は、生き物です。長く使わずにいると、木材は歪み、金具は錆びてしまいます、しまいます。
四条貴音
古い物は、尚更です。ですから、この子には、愛情を持って管理して下さる人が、必要なのです。
如月千早
だったら尚更、ちゃんとした知識を持った人に……
四条貴音
貴方に委ねたいのです、如月千早。
四条貴音
この子は、形見なのです。
如月千早
形見!?そんな大事な物を……
四条貴音
だからこそです。私の、最初で最後、只一人の生徒。
四条貴音
いえ、りぼんのお嬢さんも、おりましたね♪
如月千早
……見せて頂いても、良いですか?
四条貴音
勿論です。
如月千早
(……結構な年代物に見える。至る所に修繕の跡が残っているが、歪みもがたつきも無い。)
如月千早
(丁寧に黒く塗り直されたボディに、真珠の様に美しい、大きな紋様細工が光る。)
如月千早
綺麗な細工ですね……これは何の紋様ですか?
四条貴音
それは、太陽と月を示した物です。
四条貴音
皆をあまねく照す太陽と、狂気の光を撒き散らす月。
四条貴音
今は亡き、無二の友が拵えてくれた細工です。
如月千早
話を聞くほど、大切な物じゃないですか!やっぱり、頂けません!
如月千早
私なんかに委ねて下さる、気持ちは嬉しいのですけれど……。
四条貴音
千早は、奥ゆかしさと情けに溢れた、真、良い子ですね。
四条貴音
しかしそれが心の足枷となる事も、有ります。
四条貴音
そんな時は、先達の偉大なお言葉を借りると致しましょう。
四条貴音
「心に、棚を作れ!!」
如月千早
心に、棚を!?
四条貴音
千早は、世間一般の常識として、高価な物をほいほいとは受けとれぬ、と考えています。
四条貴音
しかし一方、私の気持ちを汲んで、引き受けたい、とも思っている。
如月千早
あー、確かにそんな感じかも……。
四条貴音
なれば、一般常識の方は、一先ず棚に置いとくのです!
如月千早
一般常識を放置!?何て魅力的な発想!!
四条貴音
するとあら不思議♪受け取ってしまうのが、人情的にも道義的にも一番に思えませんか?
如月千早
確かに!生徒は先生の指示に従わなければいけませんね!
四条貴音
千早は、真、良き生徒ですね!では、受け取ってくれますね?
如月千早
はい!先生の意思、確かに受け取りました!
四条貴音
あ、意思とかそんなのは、どーでもよいです。
如月千早
あー、そーですか……。
四条貴音
では、又会う機会が有れば。それまでどうぞ、励んでください。
如月千早
はい!頑張ります!
四条貴音
(立ち去りながら)♪くしゃみひとつでよばれたからにゃぁ~それがあたしのぉ~♪
如月千早
♪ごしゅじんさまぁ~よォ~!♪
(台詞数: 45)