ジュリア
黒井「……不味い。最近はとみに、何もかもが不味い。」
舞浜歩
黒井「取り寄せさせた貴腐ワインも、最高峰の豆で淹れさせたブラックコーヒーも、不味い。」
篠宮可憐
黒井「……理由は明白だ。目障りな765プロ。彼奴等の存在が不快を掻き立てる。」
ジュリア
黒井「覇道を進む私にすれば、奴らなど爪先に当たる石くれだ。些細ゆえに、なお腹立たしい。」
舞浜歩
黒井「『石くれなど無視するか、蹴り飛ばせばよいだろう』……愚民はそう考えるだろうな。」
篠宮可憐
黒井「だがときに、覇道を進む故に、石くれを砕き尽くすのだ。誇りは実を超越することもある。」
ジュリア
黒井「……そもそも、あの小娘を見出したのは、我が961なのだ。」
ジュリア
黒井「とある地方都市に、評判の素人がいる。聞きつけ視察すれば、成る程と思わせる資質。」
ジュリア
黒井「社員を張り付かせ、コンクールを幾つか荒らさせ話題を作り、デビューさせる予定だった。」
ジュリア
黒井「だが、なんたる事だ!我が事務所と名前が似ていたために、765に書類を送るとは!」
ジュリア
黒井「失態を晒した社員は即座に業界から追放したが、そんな事で私の怒りは収まらぬ。」
ジュリア
黒井「『あの娘』は、我が事務所で抱え、歌で他者を圧倒する目玉となるべきだったのだ。」
ジュリア
黒井「まさに、王者が振るう宝剣を飾るダイヤたるべきだったのだ。」
ジュリア
黒井「ダイヤのカットを知らなかった蛮族どもは、それ故ダイヤをおはじきにしか使えなかった。」
ジュリア
黒井「……我が手から『ダイヤ』を盗み、なおかつその『ダイヤ』をまともに輝かせられぬ!」
ジュリア
黒井「……だから、765プロは潰さねばならぬのだ。」
舞浜歩
黒井「……腹立たしいのは、この小娘のこともだ。」
舞浜歩
黒井「アレには才能が有った。だからスクールごと買収し、アメリカ修行のお膳立てもした。」
舞浜歩
黒井「あの手合いは、興味の無いことには無警戒だ。用意した道を進ませておき……」
舞浜歩
黒井「……ある日、全ては私が仕掛けたことを明かせば、逃げられぬことを思い知り従属する!」
舞浜歩
黒井「……あとは961の看板のひとつに据えれば、アジア随一のパフォーマーにはなった筈だ。」
舞浜歩
黒井「それを!たまたまアメリカで出食わした765の会長が、口先だけで攫っていくとは……」
舞浜歩
黒井「あれに投資した額と時間を計算すれば、まさしく目も当てられぬ。」
舞浜歩
黒井「その上、765はあれにどんな仕事をさせている!?あれはダンスだけやれば良いのに!」
舞浜歩
黒井「光るものを盗むだけのカラスでは、玉を得てもそれを仕立て上げることは出来ぬ。」
舞浜歩
黒井「これは芸能界の、つまり私の損失だ!決して許すことは出来ぬ!」
篠宮可憐
黒井「……」
篠宮可憐
黒井「……この小娘については……」
篠宮可憐
黒井「……この小娘については……少しわけが違うな。」
篠宮可憐
黒井「記憶の片隅に有るが。確か部下が、履歴書とともに自己アピールビデオを持って来た。」
篠宮可憐
黒井「『ルックス一本で勝負できそうな素材が来ました』、とな。」
篠宮可憐
黒井「……目の前のこいつは、役に立たぬと思ったわ!我が部下も、映像の娘もな!」
篠宮可憐
黒井「確かに、顔もスタイルも傑出したものが有る。駆け出しのスカウトなら、飛びつくだろう。」
篠宮可憐
黒井「だが、話すのを聞けば、強さも、したたかさも備えていないのは明らかだ。」
篠宮可憐
黒井「黄鉄鉱。『愚者の黄金』。金の如く輝けど、すぐに曇り、磨くことも熔かすことも出来ん。」
篠宮可憐
黒井「つまり、役立たずなのだ。ビデオの小娘は、まさにそれだ。」
篠宮可憐
黒井「もちろん面接などしなかった。浮かれていた部下も閑職に左遷した。」
篠宮可憐
黒井「……それなのに。」
篠宮可憐
黒井「なぜあの小娘が成り上がって来た!?あれが成功することなどあり得ないのだ!」
篠宮可憐
黒井「……765の成功は許されぬ。叩き潰さねばならぬ。」
篠宮可憐
黒井「叩き潰さねば……私が間違っていた事になるではないか。それは……許せん。」
(台詞数: 41)