フィクサー #5
BGM
あのね、聞いてほしいことがあるんだ
脚本家
ちゃん@春の日
投稿日時
2016-10-26 23:05:14

脚本家コメント
『あなたを不思議な世界へ誘う物語がここにある』

コメントを残す
木下ひなた
「ごめん…」
木下ひなた
「あたしは、世界は、あんたの大切なものを理不尽にも奪っちまったんだねぇ…」
木下ひなた
あたしの指先を伝って、少女の温もりと抱える寂しさを感じ取る。
木下ひなた
「ごめんねぇ…」
木下ひなた
「あんたは何度もこうやって奪われてきたんだね…」
木下ひなた
「それなのに、いつもニコニコして、それじゃ壊れちゃうよ…」
大神環
「……」
木下ひなた
あたしの問い掛けに、夢の中にいる少女からは、当然のように返事は返ってきません。
木下ひなた
きっと夢から覚めれば、すべてを奪われた世界に戻ってくるだけだから…
木下ひなた
それこそが悪夢なのでしょうか。
大神環
「会いたい…」
木下ひなた
「そうだねぇ」
大神環
「会いたいぞ…」
木下ひなた
「そうだよね」
木下ひなた
でも世界はあまりに非情で冷たい。
木下ひなた
だって…
木下ひなた
目を覚ませば何もかもを忘れて、それにすら気付かず、その現実をただただ傍受するしかない。
木下ひなた
それが仮に正しい世界の姿であっても、彼女からしたら歪んだ世界になるんだろうねぇ。
木下ひなた
罪を犯したつもりは毛頭ないが、少女に対して物凄く罪滅ぼしをしてあげたいという感覚に陥る。
木下ひなた
それがあたしの選択且つ意思ならば、それは即ち世界の意思決定になる。
木下ひなた
こんな特例はいままでにない。
木下ひなた
ただ思うに、あたしは間違いを犯そうとしているのもわかっている。
木下ひなた
それは、かつてあたしが人の子であったことを思い出させもする。
木下ひなた
人だった頃の面影が僅かに残っていて、それがあたしの思考の中で幅を利かせようとしている。
木下ひなた
それがあたしの弱さで、脆さで、そのバグが内面からあたしを狂わそうとしていても…
木下ひなた
もう、遅い。
木下ひなた
あたしの中で迷いが生まれ。
木下ひなた
あたしの中で戸惑いが生まれたその瞬間から…
木下ひなた
あたしは執行者失格になっているのだろう。
木下ひなた
ただ、それには気付かぬまま、目の前にいる少女の不思議な魅力に取り憑かれるように…
木下ひなた
あたしは罪を犯していく。

(台詞数: 31)