フィクサー #4
BGM
恋花
脚本家
ちゃん@春の日
投稿日時
2016-10-25 21:41:55

脚本家コメント
『あなたを不思議な世界へ誘う物語がここにある』
おさらい
環のお父さんはメッセンジャー所恵美の暴走により境界へ送られている。
要望があったのでメッセンジャーシリーズを一つのマイリストにまとめました。
専用のマイリストを公開していますので、よければ初見の方も、見直したい方も活用していただければ嬉しいです。

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大神環
「んっ…んぐっ…んっ」
木下ひなた
夜になると彼女は泣いていた。
木下ひなた
毎晩のように、眠りについた後、彼女は泣いている。
木下ひなた
夢の中で、もう会うことも思い出すことも叶わない大切な人を想うかのように…
木下ひなた
彼女は夜な夜な枕を涙で濡らしていた。
木下ひなた
あたしは特に何もすることもなく、その様子を見つめているだけ…
大神環
「おはよー…あれ?」
大神環
「また枕が濡れてる…」
大神環
「なんでだろう…」
大神環
「ん~…わかんないぞ」
大神環
「まあ、いいや、もう行かなきゃ」
大神環
「くふふ、今日も一日頑張るぞ!」
大神環
「神様、環のこと見守っててね!」
大神環
「いってきます!」
木下ひなた
本来ならこの言葉には、『お父さん』が入るのだろう…
木下ひなた
しかし、彼女はそれに気付くこともなく、無邪気に、まるであたしに語りかけるように…
木下ひなた
毎朝、元気よく家を飛び出していく。
木下ひなた
あたしはその後ろ姿に向かって、なんとなく毎回手を振っていた。
木下ひなた
見えるはずないんだけどねぇ…
木下ひなた
あの子を見てるとついやっちゃうねぇ。
大神環
「ただいま!」
木下ひなた
そして泥んこまみれになった彼女が毎回帰ってくる。
木下ひなた
そして夜も深まり、眠りに落ちると彼女は再び泣くのだ。
木下ひなた
いつも元気よく振る舞っている彼女だけれど…
木下ひなた
それが夜な夜な泣き声と共に内面から壊されているように見える。
木下ひなた
「これは…もしかしてあたしが生み出した歪みなのかい?」
木下ひなた
いつも絶対的な正義をもって職務を実行してきた…
木下ひなた
そんなあたしの頭の片隅に一種の疑念が浮かび上がる。
木下ひなた
一方で、それすらも歪みだと言い切ろうとしているあたしがいた。
木下ひなた
そしその疑問を払拭するというよりは、目を瞑ってしまえといわんばかりの姿勢は間違いであると…
木下ひなた
自己否定できないあたしがいる…
木下ひなた
あたしの思考はそこで考えることを一旦止めて、いま、すべき対処へと思考が移り変わっていく。
木下ひなた
そう、無意識的に優先順位をつけたのだろう。
木下ひなた
あたしがするべき対処はただ一つ、歪みを正すこと。
木下ひなた
その歪みは、今まさに目の前で眠っている。
木下ひなた
消すしかない。
木下ひなた
そう判断したあたしは、能力を発動して彼女に触れようとする。
木下ひなた
あと数ミリで彼女の身体に触れることが出来る。
大神環
「お父さん…」
木下ひなた
「えっ…」
木下ひなた
「なんで?」
木下ひなた
「どうして?」
木下ひなた
世界の意思とは別に、寸前のところであたしは能力を解除すると…
木下ひなた
あたしは彼女の頭を撫でていた。
木下ひなた
「ごめん…」

(台詞数: 45)