木下ひなた
……あたしの心の中で黒い炎が小さく灯る
木下ひなた
お仕事が終わった時、プロデューサーがあたしでは無く他の子を先に労った、それだけなのに……
木下ひなた
なんで声を掛けてくれなかったのか、あたしよりその子の方が大事なのか、
木下ひなた
その優しい目はあたしだけに向けて欲しい、そんな奴に笑顔を向けないで欲しい……
木下ひなた
自分で自分が嫌になるくらいドス黒い感情が次々と湧き出てくる……
木下ひなた
…幸いそれは強く意思を持てば無視できる程度の囁き、仲間を妬むなんて死んでもしたくない。
木下ひなた
でも、どれだけ蓋をしても決して黒い炎は消えない、心の片隅で黒い思いは微かに残る……
木下ひなた
仲間を妬むなんて、死んでもしたくないのに……
木下ひなた
世の中善意だけでできている程甘くは無い、そんな事は知っている……
木下ひなた
でも、あたしが他人に悪意を持つなんて想像した事も無かった……
木下ひなた
始まりはわかっている、プロデューサーだ。
木下ひなた
東京に出たばかりで右も左もわからないあたしを暖かい手と優しい笑顔で導いてくれた人…
木下ひなた
あの人を思うと心があったかくなって、これが恋なんだって仄かに幸せを感じて……
木下ひなた
でも、あの人の暖かい手と優しい笑顔はあたしだけに向けた物じゃなかった……
木下ひなた
それに気付いた瞬間、恋は幸せだけじゃ無くなった。
木下ひなた
あの人の笑顔が他の子に向く度に微かに感じる黒い感情……嫉妬が混ざり始めた
木下ひなた
その感情は少しずつ大きくなって来てる……今は抑えられてる、けど……
木下ひなた
いつか表に出てしまうのだろうか……醜い嫉妬を剥き出しにして仲間に悪意をぶつけるのだろうか…
木下ひなた
あたしはそんな醜い人間にはなりたくない……だから恋心ごと黒い炎を捨てようと思った
木下ひなた
でも、そう思えば思う程あの人の手は暖かく、笑顔は眩しくなるばかり……
木下ひなた
結局、あたしは思いを打ち明ける事も諦める事も出来ずに必死に悪意を抑える事しできない……
木下ひなた
あたしが悪徳組長の役に選ばれた時は怖かった、このドス黒い心が見透かされたようで……
木下ひなた
それは誤解だったけど、それであたしの中の黒い炎が消えた訳じゃない
木下ひなた
このままあたしの心は醜い悪意の塊になってしまうのだろうか……自分の黒い炎に焼き尽くされて…
木下ひなた
まるでロウソクの炎に近く羽虫のようだ、あの人と言う炎に近づいたあたしと言う羽虫…
木下ひなた
…悶々とする私に暖かい手が触れる、見なくてもわかる、あの人の手だ……
木下ひなた
あの人は心配そうに何かあったのかと聞いてくる、葛藤が顔に出ていたらしい。
木下ひなた
ここで全てをぶちまけたらきっと楽になる、あたしは良い子なんかじゃない、こんなに悪い子だと…
木下ひなた
でもあたしは決して言わないだろう、こんな嫌な自分を知られたらきっとあの人は悲しむ…
木下ひなた
それは嫌だ、この黒い炎もあの人の笑顔を見ていたいからなんだから……
木下ひなた
だからあたしはこう返す、この黒い炎を隠し、あの人の見込んだ笑顔で……
木下ひなた
『ううん、なんでもないよぉ』
(台詞数: 32)