木下ひなた
別々の空の下、別々の景色を見て、二人は違う暮らしを送っている。
木下ひなた
今、君がなにをしているか、あたしは知らない。
木下ひなた
君の行先をあたしは知らない。
木下ひなた
何も知らないんだ。
木下ひなた
それはあまりに突然の別れだったもんでね…
木下ひなた
あの人は何も言い残していってくれなかったんだ…
木下ひなた
勿論あたしも、何の言葉も贈ってあげれなかった。
木下ひなた
せめて、あの日に撮った写真くらいは贈ってあげたかったんだけどね…
木下ひなた
あのね、ちゃんと二人分現像したんだけどね…
木下ひなた
その時にはもうとっくに手遅れだったんだよ。
木下ひなた
送りたくてもね、宛先不明であたしの手元に返って来るだけなんだ…
木下ひなた
もし一度だけ時間が戻せるのなら、シャッターを押すあの瞬間に戻りたいよ。
木下ひなた
そうすれば、とびきりの笑顔で君の想い出にちゃんと刻めると思うから…
木下ひなた
それならばちゃんと写真を受け取ってくれるよね?
木下ひなた
あのね、あれからも写真はちゃんと続けてるんだよ。
木下ひなた
無理にでも新しい趣味を見つけて没頭していれば心の穴は埋められると思ったけどねぇ。
木下ひなた
あたしって単純だね…
木下ひなた
でもね、埋められっこないんだよ。
木下ひなた
レンズ越しに見る景色は本物で、いつも寂れている。
木下ひなた
何かが欠けていて、心寂しくて…
木下ひなた
それを目にするといつも気付かされるんだ。
木下ひなた
そこにはかつて君がいた事を…
木下ひなた
風景を写す時も、野菜やガーデニングを写す時もそこには必ず君がいて。
木下ひなた
君の笑顔も一緒にフレームに収められていたんだ。
木下ひなた
独り固まって立ち尽くすあたしの脳内には目に焼き付いた君のいる光景が蘇ってるんだ。
木下ひなた
「会いたい…」
木下ひなた
ホロリ零れるその言葉は依然として宛先不明のまま本人のもとに帰ってくるのだろう。
木下ひなた
そう、残像にすら届かない。
(台詞数: 28)