木下ひなた
頬は熱く、鼓動が早い。
木下ひなた
「あたしと同じ、君の頬も赤いんだね」
木下ひなた
その一言さえ言うことが出来れば、胸につっかえた気持ちもさ、パッと取れるんだろうね…
木下ひなた
二人の赤く照った表情、そんなものは夕焼け空の中に巧く溶け込んで…
木下ひなた
お互いに顔は見合わせていたけれど。空があたしとあの人を隠してくれていた。
木下ひなた
「あのね、聞いて欲しい事があるんだ」
木下ひなた
君がその一言をいうまでにどれくらいの時間が経ったのだろうね。
木下ひなた
きっと、何度も頭の中でシュミレーションもしただろうし…
木下ひなた
口に出すまでに、何度も喉元から出かけたその一言を呑み込みもしただろうね。
木下ひなた
あたしにはわかるんだ…
木下ひなた
だって、その声が震えていたから…
木下ひなた
「写真でも撮らないかい?」
木下ひなた
本当に言いたかったことはそれだけなのかな…
木下ひなた
流石のあたしにもそれはわからないんだ。
木下ひなた
だってあたしは君じゃないからね…
木下ひなた
パシャリ!
木下ひなた
正直に言うけどね…
木下ひなた
いままで風景とか野菜とか、そういうものはたくさん撮って来たんだけれどね…
木下ひなた
誰かと一緒に二人で自撮りを撮るなんて初めてだったんだよ…
木下ひなた
だからかな、少しピンボケしていてね…
木下ひなた
それとも、撮ったその写真を確認したとき。自分自身の瞳が呆けちゃったのかね…
木下ひなた
写真には、当然、夕焼け色に頬を染めた二人が写っていたんだけれどね…
木下ひなた
君の表情は少し違ったんだ…
木下ひなた
だから、あたしはつい聞いちゃったんだ…
木下ひなた
「明日また会えるよね」
木下ひなた
けれど、君からその返事は帰ってこなかったね…
木下ひなた
少し間を置いて、口を開いた君からあたしの耳に入った言葉…
木下ひなた
それは…
木下ひなた
「ありがとう」だったんだ…
木下ひなた
せつないよね…
(台詞数: 30)