木下ひなた
ーー出発は、朝早くだった
木下ひなた
見送りには、僕の他に、クラスメイトや親族
木下ひなた
みんな、手作りの横断幕を持ったりしてひなたとの別れを惜しんでいる
木下ひなた
クラスには、引越しということで説明があった。ひなたが特別扱いされるのが苦手だったから。
木下ひなた
寮へ入るとのことだから、一人で行くのも、まぁ、疑われないだろう
木下ひなた
アイドルになるのを知っているのは、親族と僕だけ
木下ひなた
…一通り別れの挨拶が済み、出発の時間が迫る
木下ひなた
ひなたが、こっちに来た
木下ひなた
少し背伸びをして、静かに僕の耳に声を残す
木下ひなた
その声を、忘れないように、しっかりと、僕は
木下ひなた
ーーーーーー
木下ひなた
ひなたは、涙を溜めながらみんなに別れの挨拶をしていた
木下ひなた
内容は、全く覚えていない
木下ひなた
ぼーっとしていた
木下ひなた
耳に残った言葉が、頭の中でこだました
木下ひなた
何度も、何度も
木下ひなた
鳴り止まない心臓の音
木下ひなた
ひなたと何度も目が合う
木下ひなた
あいつは、今、どんな気持ちでいるんだろう
木下ひなた
…考えはまとまることはなかった
木下ひなた
ぐちゃぐちゃなまま、ひなたが空港のゲートを通った
木下ひなた
なにか、言わなくちゃ
木下ひなた
なにか
木下ひなた
なにか、なにか…
木下ひなた
『……ひなたー!』
木下ひなた
「…!」
木下ひなた
『………』
木下ひなた
『………がんばれー!』
木下ひなた
『ずっと、応援してるからなー!』
木下ひなた
『……うん!』
木下ひなた
『あたしも、がんばるからねぇー!』
木下ひなた
ーーーーーー
木下ひなた
【デビュー、決まったら電話するね】
木下ひなた
【その時は、長電話でもいいかねぇ?】
木下ひなた
【きっと、色んなことがあるだろうから、話したいんだ】
木下ひなた
【………早く】
木下ひなた
【………早く、いい人見つけてねぇ】
木下ひなた
【似合う人、きっと見つかるから】
木下ひなた
ーー伸ばしかけた手は、一生届かない気がした
(台詞数: 39)