木下ひなた
二人で歩く、夕焼けの帰り道
木下ひなた
あの日、ひなたがアイドルになって、東京になったことを知ってから
木下ひなた
1日1日の、ふとした瞬間が、とても愛おしく感じていた
木下ひなた
何気ない会話、笑い声、くしゃみ
木下ひなた
会えなくなる訳ではないだろうけど、隣にひなたがいなくなることを考えると
木下ひなた
ふと、目頭があつくなった
木下ひなた
「今日はありがとねぇ」
木下ひなた
「楽しかったよ」
木下ひなた
『………』
木下ひなた
「どうかした?」
木下ひなた
『あ、ああ!いや、なんでも!』
木下ひなた
「そお?」
木下ひなた
『うん、あはは、えっと』
木下ひなた
『なんの話してたっけ』
木下ひなた
「今日は、ありがとねって」
木下ひなた
『ああ、うん!』
木下ひなた
『僕も楽しかった!』
木下ひなた
『いやー、これから会えること少なくなるし、思い出残さないとね!』
木下ひなた
『あ…』
木下ひなた
やばい、鼻につんときた
木下ひなた
なんとか…
木下ひなた
「ねぇ」
木下ひなた
『…!』
木下ひなた
『な、なに?』
木下ひなた
「……えっと」
木下ひなた
「……その」
木下ひなた
「……あのね」
木下ひなた
「……あたし」
木下ひなた
「……あたし、ね」
木下ひなた
『…?』
木下ひなた
「……あたし、が」
木下ひなた
「…あたしが、アイドルになったら、応援してくれる?」
木下ひなた
『へ…?』
木下ひなた
『あ、ああ、うん!もちろん!』
木下ひなた
『CD出したら買うし、握手会もいくし、テレビも見る!』
木下ひなた
『って、握手会はちょっと恥ずかしいかな…』
木下ひなた
「いんや、嬉しいよ」
木下ひなた
「……そっか」
木下ひなた
「ありがとねぇ」
木下ひなた
『…うん』
木下ひなた
結局、あの時、言い淀んでいた言葉がなんだったのかは、分からずじまいだった
木下ひなた
そうして、やはりなにも進展せず、ひなたとの時間は無くなっていった
木下ひなた
意気地なし
木下ひなた
あの時、ためらわなかったら
木下ひなた
わがままを押し通せたら
木下ひなた
自分の気持ちを伝えられたら、なにか変わっていたのかな
木下ひなた
……思い出は、ずっと今も思い出のままだった
木下ひなた
……明日、ひなたは東京に行く
(台詞数: 48)